2012 Fiscal Year Research-status Report
小細胞肺癌の新規骨転移モデルの開発とそれを活用した転移機構の解析
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23790452
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
坂本 修一 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所沼津支所, 研究員 (60346070)
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Keywords | 癌転移 / 小細胞肺癌 / 同所移植 / HGF |
Research Abstract |
これまでに大別して2種類の転移性亜株を得ている。すなわち、転移巣からのクローニングにより得られた接着型と、同所移植→転移巣からの回収→同所移植のサイクルを繰返すin vivo選択法により得られた浮遊型である。 このうち接着性亜株については、培養上清のサイトカインアレイ解析から、HGFを産生していることが判った。Transwellチャンバーを用いたアッセイにHGF中和抗体を加えると、高転移性亜株のマトリゲル浸潤能が抑制された。これらのことから、HGFの受容体であるMETキナーゼの特異的阻害剤ARQ197について、in vivoモデルでの転移頻度や造腫瘍能に対する効果を検討した。腫瘍接種後3日目から週5回投与(120mg/kg)を3週行い、接種後2-25日で犠牲死させ、同所移植巣の大きさ及び転移頻度を測定した。その結果、ARQ197投与群はコントロール群と比較して同所移植巣の大きさに変化は無かったが、転移頻度は顕著な低下が認められた。HGF/METシグナルは小細胞肺癌においても重要な因子であることが知られており、本モデルが小細胞肺癌の臨床像を反映し、かつ化合物評価にも有用な系であることが示唆された。 また、転移に影響する可能性がある癌の形質・現象について調べる目的で、神経内分泌性、上皮間葉転換、癌幹細胞について、それぞれ関連する遺伝子群の発現を検討したが、いずれの形質に関しても典型的な遺伝子の発現を認めることが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、主にHGFシグナルについて解析を行い、HGFシグナルに対する阻害剤の効果をin vivoで検討し、系の有用性を確認することができた。また、転移に関与する可能性のある癌の形質/現象についての検討も行った。 一方、マイクロアレイ実験により得られた転移因子候補遺伝子についてshRNAによる持続的なノックダウン細胞の樹立を試みているが、クローン間で表現形が安定していない。このために、転移因子候補についてin vivoでの転移への寄与について検証することが現時点では出来ていない。 上記の進捗状況から、「やや遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の点を中心に研究を進めて行く。 ・転移候補因子のin vivoでの評価 ・浮遊型転移性亜株における足場非依存性増殖能亢進のメカニズム ・同所移植巣と転移巣での遺伝子発現プロファイルの比較 既にマイクロアレイ解析によって、幾つかの転移因子候補を得ているが、持続的にノックダウンした細胞を樹立する段階で表現形が安定しないと言う問題がある。そこで今年度はTet誘導性shRNA発現システムによるノックダウン細胞の樹立をまず行い、in vivoでの評価を可能にしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は持続的ノックダウン実験が上手く行かなかったために、それに用いる分子生物学実験用の試薬の購入額が予定より下回った。今年度は新しいノックダウンシステムに取り組むため、それに用いる分子生物学実験用試薬の購入に当てる。それらに加え、「転移候補因子のin vivoでの評価」に用いるヌードマウスや細胞培養試薬・器具購入の費用を計上した。また、「同所移植巣と転移巣での遺伝子発現プロファイルの比較」で行うマイクロアレイ実験のスキャンニングの外注費を計上した。
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