2012 Fiscal Year Annual Research Report
粘膜免疫法を基盤としたエキノコックス終宿主経口ワクチンの開発
Project/Area Number |
23790464
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Research Institution | Hokkaido Institute of Public Health |
Principal Investigator |
孝口 裕一 北海道立衛生研究所, 感染症部, 研究職員 (50435567)
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Keywords | 粘膜ワクチン / エキノコックス / 多包条虫 / 糖タンパク質 / ワクチン / 粘膜免疫 |
Research Abstract |
本研究ではエキノコックス(多包条虫)の終宿主における感染を長期間防御するワクチン効果を発揮する虫体由来成分の探索を主たる目的とした。これまで、イヌやキツネに対する多包条虫用終宿主ワクチンの開発にはほとんど進展が無く、同じエキノコックス属の寄生虫である単包条虫用の終宿主ワクチン開発の研究が数例存在したのみであった。二年間の研究期間中、その候補となる抗原の性質を調べ、経口ワクチン候補としての適性を有している、多包条虫用ワクチンの有力な候補となる糖タンパク質成分を見出した。この抗原は虫体表面に存在する巨大糖タンパク質であり、エキノコックス感染イヌの血清IgGおよび腸管拭い液IgAに強い反応を示した。また消化管プロテアーゼであるペプシンやトリプシンおよびキモトリプシンに対して有意な消化耐性を示した。これらの結果を基に、実際に本抗原を用いてイヌに粘膜アジュバントとともに粘膜免疫(経鼻および経口)を実施し、その後、実験的にエキノコックスに感染させることで、感染防御効果の評価を行った。その結果、何も投与していないグループに比べ、免疫を施したグループは、およそ87%の寄生虫体数の減少を認めた。しかしながら、粘膜アジュバントのみを免疫したグループにおいても、およそ49%の虫体数の減少を認めたため、今後どのようなメカニズムによって感染防御効果が誘導されているのかを検証する必要性が示唆された。これらの成果は現在欧文誌に投稿中である。 本寄生虫に対するイヌの免疫的な感染防御については、未だ世界的にも議論の最中にある。今後は、本研究で得られた成果を基に、免疫抗原の量をより節約できるアジュバントや投与方法を検討することも必要である。これらの課題を克服することができれば、本寄生虫を長期的に制御するワクチン入りベイトや飼い犬に対するワクチンの開発が期待できる。
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