2011 Fiscal Year Research-status Report
アジア地域に広がる薬剤耐性三日熱マラリア原虫の起源と拡散に関する研究
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23790465
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Research Institution | Research Institute, International Medical Center of Japan |
Principal Investigator |
石上 盛敏 独立行政法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 研究員 (20392392)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 三日熱マラリア原虫 / 分子疫学研究 / 薬剤耐性 / クロロキン |
Research Abstract |
マラリアの効果的な対策を行うためには薬剤耐性マラリアの起源と拡散のメカニズムを詳細に解明することが重要である。これまでは熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性に関する研究が中心であったが、近年、三日熱マラリア原虫の薬剤耐性も徐々に報告されはじめ、その重要度が増している。本研究では三日熱マラリアの治療、並びに予防薬として、広く用いられているクロロキン(CQ)に対する耐性三日熱マラリアの分布状況の把握、並びにその起源と拡散を推定することを目的として研究を行った。CQ耐性獲得機序は不明な点も多いが、同原虫のpvmdr1のコドン976番目のアミノ酸置換(チロシン→フェニルアラニン)がCQ耐性獲得に関与していると報告されている(Suwanarusk et al, 2008)。 平成23年度は、pvmdr1の変異の有無について、国立国際医療研究センター(NCGM)研究所(33株)、韓国インジェ大学医学部(56株)、並びにフィリピン大学公衆衛生学部(15株)で保管されていた三日熱マラリア原虫分離株(合計104株)を用いて解析を行った。その結果、NCGM株は、パプアニューギニア4株、マレーシア、タイ、インド、ウガンダ、ルワンダ、スーダン、モーリタニア、ニジェール、コモロスの13株が変異型(CQ耐性型)で、他の20株は野生型(CQ感受性型)であった。すでにCQ耐性三日熱マラリアの報告がある国の他に、まだほとんどCQ耐性が報告されていないアフリカ諸国にも変異型原虫の分布が広がっていることが示唆された。一方、韓国株は56株全てが野生型であったのに対し、フィリピン株は15株全てが変異型であった。韓国ではすでに2例の臨床的なCQ耐性が報告されているが、フィリピンからの報告はまだない。今後アフリカ諸国、並びにフィリピンからも臨床的なCQ耐性が発生すると予想されるので注意が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、平成23年度は三日熱マリラア原虫のクロロキン耐性関連遺伝子(pvmdr1)の変異の有無について、研究代表者の研究部で保管する株を用いて解析を行った。具体的には、国立国際医療研究センター(NCGM)研究所(33株)、韓国インジェ大学医学部(56株)、並びにフィリピン大学公衆衛生学部(15株)で採取されたPv分離株(合計104株)を用いた。上記の三日熱マラリア原虫104株について、DNAの抽出、PCR法による標的DNA領域の増幅、並びにDNA塩基配列の決定に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はアジア諸国で拡散しはじめたクロロキン耐性三日熱マラリア原虫の起源と拡散のメカニズムを解明するために、クロロキン耐性関連遺伝子pvmdr1近傍のマイクロサテライトDNAを複数座位(10座位程度)同定し、これまでに解析した104株について、マイクロサテライトDNA多型解析を行う。具体的には、GenBankデータベースに登録されている三日熱マラリア原虫Salvador-1株の全ゲノム情報を用いて、pvmdr1近傍(上流・下流の50Kb程度)のDNA塩基配列からマイクロサテライトDNAを探索する。次に同定したマイクロサテライトDNAを特異的に増幅するプライマーセットを設計し、これまでに解析した全ての三日熱マラリア原虫株についてpvmdr1近傍のマイクロサテライトDNAを解析する。その後、得られたマイクロサテライトDNAのアリルデータを用いて各種集団遺伝学的解析を行い、各原虫株pvmdr1近傍の遺伝的な類似点や相違点を推定し、クロロキン耐性三日熱マラリア原虫(変異型pvmdr1)の起源と拡散のメカニズムを解明する。特にアジア諸国の三日熱マラリア原虫集団間で、変異型pvmdr1とその近傍マイクロサテライトDNA多型の比較解析を行い、耐性型変異がアジア諸国間でどのように拡散しているのか、あるいは拡散せずに、それぞれの流行地域で出現しているのかを推定する。また平成24年度中に得られた成果を国内外の学会等で発表すると同時に、国際的にインパクトのある専門誌に研究成果を発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、三日熱マラリア原虫pvmdr1遺伝子の近傍のマイクロサテライトDNAの解析を行う。具体的には蛍光修飾を施したプライマーを作成し、これを用いて標的領域をPCR法で増幅し、ABI Genetic Analyzerを用いてフラグメント解析を行う。研究費の約半分は、この解析に必要な試薬類に用いる。また残りの約半分は、研究成果の国内外の学会等での発表のための旅費、並びに論文の投稿に用いる予定である。
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Research Products
(5 results)