2011 Fiscal Year Research-status Report
新規下痢原性病原菌Escherichia albertiiのゲノム及び病原性解析
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23790480
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大岡 唯祐 宮崎大学, 医学部, 助教 (50363594)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Escherichia albertii / ゲノム解析 / 病原機構 / III型分泌システム |
Research Abstract |
Escherichia albertiiは、近年、大腸菌の近縁種として新たに命名された新菌種で、腸管出血性大腸菌や腸管病原性大腸菌と同様に、LEEと呼ばれる領域にコードされるIII型分泌系を有することが明らかになっている。しかし、ヒト病原菌としての位置づけは十分になされておらず、基本的な生化学的性状なども未だ不明な点が多く、有用な疫学マーカーも存在しない。申請者は、最近、国内で食中毒患者や動物から病原性大腸菌として分離された株の中に、E. albertiiが数多く存在し、本菌が重要なヒト病原菌の一つであることを見出し論文発表した。本研究では、異なる進化系統のE. albertii 4株のゲノム及び病原性解析を行い、病原性大腸菌との鑑別に有用なE. albertiiの疫学マーカーを同定するとともに、ヒト病原菌としての病原機構を明らかにすることを目的とした。平成23年度は、eae遺伝子を保有する大腸菌として当初分離された菌株の系統解析によりE. albertiiとして同定された26株の中から、比較的系統の異なるE. albertii株4株を選定してRoche454を用いたゲノム解析を行った。これまでの解析の結果、各株について大腸菌ゲノムとほぼ同じ計5 Mb前後の1-3本のscaffoldからなるドラフトゲノム配列が得られている。また、PCRとその産物のシーケンシングやFosmidライブラリーのランダムショットガン法等を用いて、完全長ゲノム配列の取得に向けたフィニッシング作業を進行中である。解析対象4株のうち2株については、数ギャップを残すのみであり、アノテーション作業とその情報を利用した4株のゲノム比較を行い、本菌種に特異的な配列を多数同定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画として、(1)新型シークエンサーRoche 454 FLX (454)によるドラフトゲノム配列取得、(2)配列データの解析及び完全長ゲノム配列の取得、(3)アノテーションと比較ゲノム解析、(4)E. albertiiのゲノム特性の解明: 種特異的遺伝子群および病原性関連遺伝子群の抽出の4項目を計画した。項目(1)は既に完了し、項目(2)の完全長ゲノム配列に向けたフィニッシング作業を進行中である。解析対象4株のうち、2株については配列決定が困難な領域を数カ所残すのみであり、ほぼ完全な配列の決定が完了している。項目(3)については、配列未決定の数カ所以外の領域に関して、アノテーションパイプラインであるMiGAPシステム及び既知の大腸菌群のゲノム配列を用いたアノテーションを完了している。また、既知の大腸菌ゲノムとの比較解析から、大腸菌間で比較した場合に比べ、E. albertii株と大腸菌との配列相同性がゲノム全体にわたって低いことから、この2菌種は別菌種であることが明らかとなった。項目(4)に関しては、項目(3)で行ったアノテーション情報を利用し、E. albertiiの疫学マーカー遺伝子候補検索のため、4株に共通して存在し、かつ大腸菌などの近縁種に存在しない遺伝子群を選出している。なお、フィニッシングが進んでいない2株についても、ゲノム上に複数コピー存在する挿入配列やプロファージといった配列以外は既に決定されていると予想されることから、疫学マーカーとなり得る菌種特異的遺伝子群の抽出は出来ていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続き、4株のE. albertiiの完全長ゲノム配列取得に向けたフィニッシング作業を進める。また、得られた全ゲノム情報を用いて、E. albertiiの種特異的な病原因子の同定と病原機構の解明、さらに種々の動物の腸管における本菌の常在性を明らかにする。具体的な平成24年度の実験計画としては、(1)PCRによるE. albertii特異的遺伝子群のスクリーニング、(2)哺乳類細胞への感染実験による病原性関連遺伝子群の解析、(3)ウサギ腸管ループ試験による病原性関連候補遺伝子の解析、(4)環境中におけるE. albertiiの分布、(5)LEE保有菌株とのゲノム比較の5項目を掲げている。項目(1)については、既に4株のE. albertiiと大腸菌株の既知ゲノム配列との比較がほぼ完了し、PCRスクリーニング系が構築出来ているため、当研究室で保有している大腸菌株コレクションへのスクリーニング作業を行う。さらに、E. albertiiでの保存性及び特異性を確認出来た(疫学マーカーが同定出来た)段階で、項目(4)にある環境中での分布検索作業に取りかかる。項目(2)の培養細胞への感染実験は既に実験系の構築が完了しており、標的遺伝子の選定・破壊株を作成して感染実験を行う。項目(5)の動物実験についても、項目(2)について同じ破壊株を用いて行う。項目(5)のLEE保有菌株とのゲノム比較については、T3SSのエフェクターレパートリー等の比較が既に完了しており、今後はLEE全体の比較解析と進化過程の解明を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度(平成24年度)は、主に(1)4株のE. albertiiゲノムのフィニッシング用の試薬(PCR及びシークエンシング)、(2)環境からの分離同定に必要な試薬(検出培地及びPCRスクリーニング)、(3)感染実験関連(細胞培養器具と試薬、実験動物の購入など)の3項目について研究費を使用する。また、オランダ(アムステルダム)で開催される国際学会での発表及び論文発表を予定しており、その費用として使用する。
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[Journal Article] Clinical significance of Escherichia albertii.2012
Author(s)
Ooka T, Seto K, Kawano K, Kobayashi H, Etoh Y, Ichihara S, Kaneko A, Isobe J, Yamaguchi K, Horikawa T, Gomes TA, Linden A, Bardiau M, Mainil J, Beutin L, Ogura Y, Hayashi T
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Journal Title
Emerging Infectious Diseases
Volume: 18
Pages: 488-492
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Phylogenetic and intimin-subtyping analysis of eae-positive strains initially identified as enteropathogenic and enterohemorrhagic Escherichia coli.2011
Author(s)
Ooka T, Seto K, Kawano K, Kobayashi H, Etoh Y, Ichihara S, Bardiau M, Kaneko A, Isobe J, Yamaguchi K, Horikawa K, Ogura Y, Nakayama K, Mainil J, Hayashi T
Organizer
XIII International Congress of Bacteriology and Applied Microbiology
Place of Presentation
Sapporo Convention Center(札幌)
Year and Date
2011年9月6日~10日
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