2011 Fiscal Year Research-status Report
ボルデテラ属細菌の産生するネクローシス誘導因子BopCの作用機序の解析
Project/Area Number |
23790484
|
Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
桑江 朝臣 北里大学, 大学院感染制御科学府, 講師 (60337996)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 百日咳 / エフェクター / 病原因子 |
Research Abstract |
【1】BopCの分子内・分子間相互作用の解析BopCは658アミノ酸からなるタンパク質であるが、BopCのN末半分(1-312a.a.; N-moiety)とBopCのC末半分(313-658a.a.; C-moiety)を哺乳類培養細胞内で発現させると、BopC全長を発現させた場合とほぼ同様の細胞傷害活性を示す。平成23年度は、N-moietyとC-moietyをそれぞれFLAG-HaloタグとHis-Strepタグを付与した組換え型タンパク質として、別々に大腸菌から精製した。精製したN-moietyとC-moietyを混合し、ストレプトタクチンビースを用いたプルダウンアッセイにより、N-moietyとC-moietyが共沈することが示唆された。現在は特異的な相互作用を示す実験条件を検討している。【2】BopCとBtcAの宿主細胞内における相互作用の解析(1)BopCのC-moietyとBtcAをCOS-7細胞に共発現させ、免疫蛍光染色を行なうとどちらのタンパク質も核周辺にパッチ状に染色される、(2)組換え型のBopCと組換え型のBtcAが結合することが報告されている、(3)BtcAの欠損株の細胞傷害活性は野生株より有意に低い、という3つのことからBtcAが宿主細胞内でBopCと相互作用し、細胞傷害活性に補助的な役割を果たしていることが示唆された。平成23年度,FLAGタグを付与したBopCのC-moietyとBtcAを培養細胞内で共発現させ、細胞溶解液を調製し、抗FLAG抗体を用いて免疫沈降を行った結果,BtcAが共沈してくることが明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分子間相互作用の解析についてはいくつかの条件を試みた。当初はグラム陽性菌であるBrevibacillus属細菌の発現系を用いて組換型蛋白質の精製を試みたが,産生量が少ないこと,ニッケル樹脂への目的蛋白質の結合性が低いなどの問題があり,計画したような精製度とタンパク質量が得られなかった。そこでコールドショックプロモーターを有する遺伝子発現用プラスミドベクターを用いて,再度蛋白質の精製を試みた。その結果,目的の精製度および蛋白質を達成することに成功した。また一方でグルタチオン-S-トランスフェラーゼと融合させたBopCあるいはBtcAの精製を試みたが,蛋白質の産生量が少ないという問題があった。そこでハロタグと融合させた蛋白質を大腸菌内で産生させる系を導入した。その結果,相互作用解析に用いるのに十分な精製度の組み換え蛋白質を十分量得ることに成功した。BopC全長をコードするプラスミドとBtcAをコードするプラスミドを混合し,Cos-7細胞あるいはHeLa細胞にトランスフェクションした。その結果,2つのプラスミドを同時にトランスフェクションした後に培地中に遊離してきたラクトースデヒドロゲナーゼ(LDH)の量は,BopC全長をコードするプラスミドを単独でトランスフェクションした後に培地中に遊離するLDHの量と有意な差が認められなかった。この結果は,BtcAとBopCの相互作用がBopCの細胞傷害活性を増強するという当初の仮説が間違っていることを示唆した。今後はBtcAの機能についてBopCの活性の補助を行なうという予想に固執せずに,BopC-BtcA間の相互作用が病原性に貢献しているのか否か熟慮しながら研究を進めていく。
|
Strategy for Future Research Activity |
【1】BopCの宿主細胞内の局在の解析BopCのC-moietyをHeLa細胞に共発現させて免疫蛍光染色を行った場合、これら二つのタンパク質は共に核周辺に蛍光シグナルが認められることから、何らかの細胞小器官に局在している可能性が考えられた。そこで、BopCのC-moietyあるいはBtcAを発現させたHeLa細胞を抗EEA1抗体(初期エンドソーム)、抗カルレティキュリン抗体(小胞体)、抗Mannosidase II抗体(ゴルジ体)、抗ERAB抗体(ミトコンドリア)等のマーカー抗体と抗BopC抗体を用いて免疫蛍光染色を行い、いずれかの細胞小器官に局在しているかを調べる。この解析を行った場合,どの細胞小器官の蛍光シグナルとも局在が一致しないことが考えられる。その場合は宿主細胞の種類をA549細胞に変えて、同じ実験を行なうとともに、Subcellular Protein Fractionation Kit (Thermo Scientific社)を用いて、細胞質画分、膜画分、各画分、細胞骨格画分に分画し、いずれの画分にこれらのタンパク質が含まれているのか調べる。【2】BopCあるいはBopC-BtcA複合体と結合する宿主側因子の同定FLAGタグもしくはStrepタグを付与可能な哺乳類細胞用発現ベクターpCAGを用いて、BopCと相互作用する宿主側因子を取得する。pCAGベクターを用いてBopCのN-moietyあるいはC-moietyを培養細胞内で発現させる。その後、細胞溶解液を調製し、抗FLAG抗体もしくはStrep-TactinビーズでBopCに結合するタンパク質を回収し、そのサンプルをTOF-MSで解析する。BtcAについても同様の方法を試み、相互作用する宿主側因子の同定を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究を行なうための安全キャビネット、CO2インキュベーター、冷却遠心機、冷蔵庫、冷凍庫などの機器は既に配備されているため,50万円を超える機器を購入する予定はない。BopCと相互作用する宿主側因子が同定された後に,その因子をノックアウトされたマウスを試用して実験を行なうことを考えており,実験動物代として80万円の予算をとっている。また老朽化した卓上遠心機の更新のために20万円の予算をとっている。クローニング後の配列確認は時間の節約を考慮し,外部委託することを考えており,予算として10万円ほど予定している。ピペットやチューブなどのプラスチック消耗品,フラスコなどのガラス機器,および試薬・キット(抗体,制限酵素,プラスミド精製キット,ゲル抽出キット,siRNA作製費,トランスフェクション試薬,細胞培養用培地,組み換えタンパク質精製用樹脂,一般試薬等)に100万円ほどの予算をとっている。年に2回国内(5万円 x 2)で、年に1回海外(30万円)で成果発表をするための予算をとっている。英文校閲費は一つの論文原稿あたり5万円の予算をとっている。
|
Research Products
(3 results)