2011 Fiscal Year Research-status Report
乳酸桿菌による自然免疫賦活化作用に関与する菌体因子の解明
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23790485
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
伊藤 雅洋 北里大学, 薬学部, 助教 (90596727)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プロバイオティクス / 自然免疫賦活化 / 菌体表層構造 |
Research Abstract |
(1) AsnH 酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連の解明 (研究計画 1)AsnH 酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連を明らかにするため、野生株および asnH 変異株の asnH 遺伝子を組み込んだ発現ベクターを作製し、大腸菌にて大量発現および精製した AsnH タンパク質について、乳酸桿菌細胞壁抽出物を基質に、Amplex Red glutamic Acid/ Glutamate Oxidase assay kit を用いて AsnH 酵素活性を算出した。その結果、asnH 遺伝子を有し自然免疫賦活化作用を示す菌株のみ AsnH 酵素活性を示すことが示唆された。一方、乳酸桿菌細胞壁抽出物の代わりにアスパラギン酸を基質として用いたところ AsnH 酵素活性は認められなかった。すなわち、AsnH 酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連が示唆され、AsnH は細胞壁構造形成に関与することが推察された。(2) 乳酸桿菌の菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との関連の解明 (研究計画 2)菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との関連を明らかにするため定常期の野生株、asnH 変異株および asnH 相補株の菌体を走査型および透過型電子顕微鏡により観察、比較した。走査型電子顕微鏡像では asnH 遺伝子を有する菌株では菌体表層構造は多数の突起のようなものに覆われているのに対し、asnH 変異株ではこれらの突起は認められなかった。一方、透過型電子顕微鏡像を用いて上記菌株の細胞壁の厚さを比較したが、これらの菌株間で細胞壁の厚さに違いは認められなかった。すなわち、AsnH は細胞壁ペプチドグリカン層形成には大きく関与しないが、菌体表層構造形成に関与し自然免疫賦活化作用を示すことが推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AsnH 酵素活性と自然免疫賦活化作用との関連を明らかにし、研究計画1 を達成した。研究計画2である菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との解明については、走査型および透過型電子顕微鏡により観察、比較し、AsnH が菌体表層構造形成に関与することを視覚的に明らかにした。現在は各菌株のペプチドグリカン断片についてLC-MS/MS解析を行いその構造の決定を試みており、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画2である菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との解明については、現在ペプチドグリカン断片についてLC-MS/MS解析を行い、その構造の決定を試みており、研究はおおむね順調に進展している。引き続き実験を行うとともに、予定通り菌体表層多糖についても構造の決定を試み、菌体表層構造と自然免疫賦活化作用との関連を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の消耗品費 (1,500 千円) はガスクロマトグラフィーおよび核磁気共鳴分光解析用器具・試薬購入費を計上したためである。その他の消耗品費は平成 23 年度とほぼ同額を想定しており、本研究で実施する細菌学的実験および分子遺伝学的実験に必要な一般的試薬等の消耗品費は、これまでに申請者が 1 年間で使用した量をもとに積算した。さらに今年度は学会発表用旅費 (50 千円)、英文論文校閲費 (50 千円) および論文投稿費 (100 千円) を計上した。
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