2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790490
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
本田 尚子 国立感染症研究所, 放射能管理室, 研究員 (40600911)
|
Keywords | 結核 / 抗酸菌 / 休眠 / 再燃 / 細菌 |
Research Abstract |
結核菌は世界の人口の1/3に感染し、感染者の10%が生涯のいずれかの時期に発症する。日本の年間罹患者は約2万人であり半数は70歳以上の高齢者の再燃による。結核菌は人に感染後、発症の有無に関わりなく一定の割合で増殖を停止し休眠状態へ移行する。数十年にわたり休眠状態で潜在感染した菌は、高齢化等に伴い増殖を再開し発症する。既存の抗生物質の効かない休眠菌を殺菌することは、結核再燃対策および結核の抗生物質による治療の短期化に重要であるが、休眠誘導、休眠の維持、再増殖に到る機構の詳細は不明である。近年休眠時に発現変動する遺伝子は網羅的遺伝子発現解析やプロテオーム解析により明らかにされつつある。しかし休眠誘導や再活性化に重要な役割を担う遺伝子が必ずしも大きな発現変動を伴うとは限らず、発現解析のみでは休眠機構の解明に不十分である。 結核菌の休眠・再活性化に関与する分子機構を解明するため、24年度は、BCGのゲノム断片のライブラリーを迅速発育性抗酸菌Mycobacterium smegmatisに導入し、Wayneの低酸素休眠誘導モデルを用いて休眠を制御する候補遺伝子をスクリーニングした。得られた休眠制御候補遺伝子を含むゲノム断片のうち、転写調節領域の全長が含まれていない遺伝子については、全長をクローニングした過剰発現株を作成し、再現性の確認を行っている。 ストレプトマイシン(SM)要求性のM. tuberculosis 18b株はSM存在下で増殖し、SM非存在下では数回の分裂の後増殖を停止し、SMを添加すると増殖を再開することから、休眠現象のモデルとして利用されつつある。18b株は16SrRNAに1塩基挿入変異があるが、この変異がSM要求性の原因であるかを検証するため、18b株からリボソームを抽出し、in vitro翻訳実験を行い、SMの存在下でも翻訳が起きることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
休眠誘導後のM.smegmatisの再増殖に予定していたより日数を要したことから、計画より遅れている。今後再現性の確認および休眠における遺伝子の機能解析を行う予定である。 ストレプトマイシン要求性の結核菌18b株から抽出したリボソームを用いたin vitro翻訳実験では、SMの有無に関わらず翻訳が起きたことから、精製過程でリボソームからSMが解離せず、SM非添加でも翻訳が起きたと考えられる。リボソームの洗浄もしくは、in vitro翻訳以外の方法で、SMとタンパク質合成の関係を解析する。
|
Strategy for Future Research Activity |
スクリーニングで得られた休眠制御候補遺伝子について、再現性の確認、発現解析および機能解析を行い、休眠との関連を解析する。 ストレプトマイシン要求株について、タンパク質合成との関わりを、アイソトープやピューロマイシン抗体を用いて解析する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
休眠関連遺伝子の発現解析、変異株の作成、染色等に使用する。またストレプトマイシン要求株のストレプトマイシンとタンパク合成の関係について、アイソトープや抗体を用いた解析に、H24年度繰越金とH25年度請求額を合わせ使用する。
|
Research Products
(1 results)