2011 Fiscal Year Research-status Report
オーラシンアルカロイドが示す強い抗菌活性とその利用に向けた研究
Project/Area Number |
23790492
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安武 義晃 独立行政法人産業技術総合研究所, 生物プロセス研究部門, 研究員 (20415756)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 抗生物質 / シトクロムP450 / 構造生物学 / 放線菌 / アルカロイド |
Research Abstract |
H23年度はまず、研究対象であるP450遺伝子(rauA)をpET28aベクターに導入し、大腸菌BL21(DE3)に形質転換し大量発現を試みた。LB培地にはヘム前駆体(5-aminolevulinic acid)および硫酸鉄を添加し、IPTGによる目的遺伝子の発現誘導を18℃の温度で行った。発現はCまたはN末端にヒスタグを融合した系を作製して行い、双方で1Lの培養あたり約10mg程度の可溶性P450の発現に成功した。発現サンプルはNiアフィニティ、陰イオン交換、ゲル濾過クロマトグラフィーによって精製を行い、各種アッセイ、結晶化を行った。不活性なオーラシンRE前駆体の調製は、研究協力者である産業技術総合研究所・北川航博士によって行われ、その前駆体物質のNMR構造解析は同じく協力者である東京大学・葛山智久博士によって行われた。結果、前駆体物質はキノリン環窒素が水酸化されていない物質であることが判明した。すなわち、オーラシンREの強い抗菌活性は窒素の水酸化によって生まれることが明確となった。また上記の方法で調製したP450とホウレンソウ由来電子伝達蛋白質を用いた、in vitro変換実験を行い、マチュアなオーラシンREが実際に生産されることを確認した。すなわち、本P450(RauA)がキノリン環窒素の水酸化を触媒し、オーラシン骨格に強い抗菌活性を付与する役割を担うことが明らかとなった。ここまでの成果は現在論文投稿の準備中である。また、P450の結晶化スクリーニング実験を行い、いくつかの条件で結晶化に成功した。結晶は基質(オーラシンRE前駆体)フリーおよび基質存在下の両方で達成し、シンクロトロン放射光を利用した回折実験の結果、分解能2-3オングストローム程度の複数のデータセット収集に成功した。CYP107をサーチモデルとした分子置換法に成功し、現在構造の精密化を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度はP450 RauAの機能解析(酵素学的パラメータの取得、基質結合親和性の評価)、およびP450 RauA分子の結晶化までを完了させることを目標としていた。実際に、本P450 RauAがオーラシン骨格のキノリン環窒素を水酸化する活性を有すること、その活性値、Km, Vmax値、および基質結合常数を見積もることに成功し、またP450 RauA分子の結晶化にも成功した。P450の機能解析までの論文を現在研究協力者と共に執筆中である。以上の点を考慮し、本研究課題はおおむね順調に進捗していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度から引き続き、P450 RauAの基質フリーおよび不活性オーラシンREとの高分解能結晶構造解析を目指し、結晶の改良および回折データ収集、構造解析を継続する。現在の結晶回折データはモザイク角が大きく、モデル精密化において構造の信頼度を示すR値が低下し収斂しない問題をかかえている。そのため、最終的に精度の高い構造解析を達成するまで結晶化とデータ取得を反復して行なう必要がある。信頼度の高い結晶構造解析を行う事で、基質がどのような方位で結合ポケットに納まり、また基質認識にどのアミノ酸もしくは二次構造パーツが重要であるかを詳細に理解することを目指す。これら構造情報に基づき、入手しやすい類似化合物に抗菌活性を付加させることができるかを検討する。可能であれば、申請者がこれまで行ってきたP450構造研究において得られた成果を利用し、P450 RauAの活性を向上させる変異導入や基質候補分子とのドッキングシミュレーションを行う。実際に抗菌活性を発揮するアナログ分子が発見できた際には、そのアナログ分子との共結晶化・構造解析も行う。また、本P450分子の構造に関する学術論文の発表を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を確実に遂行するため、次年度研究費はまず、蛋白質実験に必要な一般試薬および消耗品、結晶化のために必要な試薬類の購入に使用する。また、結晶化を行うためのインキュベータのスペースが十分でないことから、結晶化インキュベータの購入を検討している。さらには、回折データ取得実験のためのシンクロトロン放射光施設への旅費、成果発表および情報収集のための国内および国外学会への参加費および旅費、また論文出版のための経費に使用する予定である。
|
Research Products
(2 results)