2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規Tax1結合因子を介したHTLV-1発癌の悪性化機構
Project/Area Number |
23790498
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 助教 (80377192)
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Keywords | HTLV-1 / Tax1 / USP10 / ストレス顆粒 / 活性酸素種 |
Research Abstract |
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)は成人T細胞白血病(ATL)の原因ウイルスであり、ATLの発症にはゲノム異常が蓄積することが必須である。HTLV-1がコードする発がん蛋白Tax1は、ゲノム異常の原因となる活性酸素種(Reactive oxygen species; ROS)の異常産生に関与することが報告されているが、その分子機序は未だ不明である。本研究では、Tax1に結合する因子として我々が同定したUSP10について解析し、以下のような結果を得た。 1.USP10は亜ヒ酸処理下において形成されるストレス顆粒(Stress granule; SG)に局在した。USP10欠損細胞を樹立したところ、野生型細胞よりも亜ヒ酸処理下におけるSG形成能が低下しただけでなく、その後に誘導される細胞死が昂進した。さらにこの USP10欠損細胞における細胞死の昂進が抗酸化剤によって阻害された。 2.質量分析を実施した結果、USP10と最も強く結合する因子としてG3BP1を同定した。G3BP1はUSP10の抗酸化活性を阻害することにより定常状態における活性酸素種(ROS)の産生を活性化した。しかし、亜ヒ酸処理後ではG3BP1とUSP10がストレス顆粒の形成を促進することで、USP10の抗酸化活性は解除された。 3.酸化ストレス応答因子であるATMはUSP10をリン酸化修飾することが知られている。そこでATMのリン酸化活性を阻害したところ、USP10によるROS抑制能が低下した。 以上の結果から、USP10がそのSG形成能を介して抗酸化活性を有することが示された。亜ヒ酸を含む治療薬が一部のATLに対して有効であることが臨床研究において示されていることから、今後はUSP10を標的としたATL治療薬の開発を目指した解析を進めていく予定である。
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