2011 Fiscal Year Research-status Report
パラミクソウイルスのIFN-α産生阻害活性と病原性発現
Project/Area Number |
23790499
|
Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
北川 善紀 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (00444448)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | パラミクソウイルス / 自然免疫 / インターフェロン / アクセサリー蛋白質 |
Research Abstract |
本研究では、局所感染型と全身感染型のパラミクソウイルスがそれぞれ有するIFN-α産生を阻害する能力を分子レベルで解析し、局所感染型ウイルスの病原性発現における意義を解明することを目的とした。 本研究課題では、まず、局所感染型ウイルスであるセンダイウイルス、パラインフルエンザ2型ウイルス及び3型ウイルスと、全身感染型ウイルスであるニパウイルス、麻疹ウイルスのアクセサリー遺伝子をPCR法を用いて合成し、これらの遺伝子断片を哺乳動物細胞用ベクターに組み込んだ。作成したそれぞれの発現ベクターを哺乳動物細胞に導入し、それぞれの蛋白質が発現することを確認した。 各ウイルスのアクセサリー蛋白質がToll-like receptor(TLR)-7/9依存的IFN-α産生経路を抑制するか検討するため、アクセサリー蛋白質発現ベクターと共に、関与するシグナル伝達分子とIFN-αプロモータを配したレポータプラスミドを哺乳動物細胞に導入した再構築系を用いて解析した。その結果、局所感染型と全身感染型にかかわらず、本研究で試したすべてのウイルスのV蛋白質が、TLR7/9依存的IFN産生シグナルを強く抑制することが明らかになった。 次に、これらのV蛋白質の標的分子を解析するため、各シグナル伝達分子との相互作用を免疫沈降法によって解析した。その結果、IFN-αの転写因子であるIRF7が、V蛋白質と特異的に結合することが示された。IRF7はリン酸化酵素によってリン酸化されて活性化することがすでに報告されている。そこで、IRF7のリン酸化をV蛋白質が抑制するかどうか検討したところ、試したすべてのV蛋白質がIRF7のリン酸化を抑制することが示された。 以上の結果から、感染様式にかかわらず、パラミクソウイルスのV蛋白質には、TLR7/9依存的IFN-α産生経路を阻害する活性があることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の当初研究計画の通り、局所感染型と全身感染型のパラミクソウイルスのアクセサリー蛋白質について、「TLR7/9依存的経路の阻害機構の解析」と「標的宿主分子の検索」の研究課題を進めてきた。その結果は「研究実績の概要」に記述したように、局所感染型と全身感染型にかかわらず、パラミクソウイルスのアクセサリー蛋白質の一つであるV蛋白質が、TLR7/9依存的なIFN-α産生経路を阻害する活性を有することを見出した。また、V蛋白質はIFN-α産生に関わる転写因子IRF7と結合し、IRF7のリン酸化を抑制することを見出した。以上の点から、当該年度の研究がおおむね順調に進展していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの解析結果から、パラミクソウイルスのV蛋白質がIRF7と結合し、そのリン酸化を抑制することが明らかになった。今後も、TLR7/9依存的IFN-α産生経路阻害に関わるV蛋白質の分子機構について解析を進めていく。具体的には、IRF7以外の標的宿主分子の探索、IRF7のリン酸化酵素であるIKKαやIRAK1との相互作用やその機能抑制の有無等について解析を行う予定である。 また、当初の研究計画に従って、欠損変異やTLR7/9依存経路阻害に重要と思われるモチーフを破壊する点変異を導入したV蛋白質を作製し、TLR7/9依存的経路阻害能およびIRF7との結合能を評価する。それにより、IRF7との結合がTLR7/9経路阻害によって必須であるかどうかを検討する。さらに、V蛋白質の機能ドメインを決定し、TLR7/9経路阻害活性を喪失した変異V蛋白質をもつ組換えウイルス作製を進める。組換えウイルスには、局所感染型ウイルスであるパラインフルエンザ2型ウイルスを想定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に使用する予定の研究費(次年度使用額)は1,258円ほどであり、当初計画した使用計画に大きな変更はない。研究費の多くは、研究を遂行するための消耗品の購入に使用する予定で、設備備品の購入の計画はない。また、研究成果を発表するために学会への出席にかかる経費、および論文の投稿にかかる経費に使用する。
|