2011 Fiscal Year Research-status Report
E型肝炎ウイルスの粒子表面に存在する細胞由来膜成分の同定と獲得機序に関する研究
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23790508
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
長嶋 茂雄 自治医科大学, 医学部, 講師 (60433116)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | E型肝炎ウイルス / 粒子形成 / 放出 / MVB経路 / ESCRT機構 / Tsg101 |
Research Abstract |
E型肝炎ウイルス (HEV) のORF3蛋白質に存在するPSAPモチーフは、膜に覆われたウイルス粒子の形成ならびに感染細胞からのウイルス粒子の放出に重要であることが明らかとなっている。そこでH23年度は、ORF3蛋白質と宿主因子であるtumour susceptibility gene 101 (Tsg101) の相互作用の解析、ならびにmultivesicular body (MVB) sorting機構を阻害することによるHEV放出効率への影響を解析した。 野生型ORF3蛋白質はTsg101との結合が認められたが、PSAPモチーフを持たない変異型ORF3蛋白質では結合が認められず、ORF3蛋白質はPSAPモチーフを介してTsg101と細胞内で結合することが明らかとなった。また、Tsg101に対するsiRNAならびにVps4のドミナントネガティブ変異体を用いて、これらの宿主因子を抑制したところ、HEVの放出が阻害された。以上の結果から、Tsg101およびVps4はウイルスの放出に重要であり、HEVの膜形成ならびに放出には多くのエンベロープウイルスで報告されているMVB pathwayが関与していることが明らかとなった。さらに、HEVはMVB sorting機構を細胞膜上ではなく、エンドソーム膜上で利用している可能性が示唆された。 本研究成果は、Journal of General Virology (Nagashima et al. Tumour susceptibility gene 101 and the vacuolar protein sorting pathway are required for release of hepatitis E virions. 92:2838-2848, 2011)に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、(1)HEV粒子表面の細胞に由来する膜成分の同定、(2)ウイルス粒子表面の膜獲得機序の解明、(3)粒子形成に関わる細胞内膜輸送系を明らかにすることを目的としている。 ウイルス粒子表面の膜成分獲得機序の解析については、研究実績の概要に記したようにすでに論文として発表した。その他、H23年度に計画した細胞由来の膜成分の同定については、ジギトニンを用いた検討によりHEV粒子表面の膜成分が脂質膜であることを明らかにした。また、膜に覆われたウイルス粒子を抗原として得られたマウスモノクロナール抗体を用いて、宿主細胞内での抗原の局在を蛍光抗体法により検討した結果、共局在を示す抗原を同定することができた。現在、イムノキャプチャーRT-PCR法により、その抗原がHEV粒子表面の膜上に存在しているか否かを調べている。 H24年度に計画した粒子形成に関わる細胞内膜輸送系の解明についても、一部の解析が終了している。エンドソーム輸送を阻害する薬剤を用いて、HEVの放出効率に与える影響を解析した結果、初期エンドソームの移動を阻害すると、ウイルスの放出が抑制された。一方、後期エンドソームの輸送を阻害しても、ウイルスの放出効率に影響は認められなかった。このことから、HEVの放出には初期エンドソームが関与するエンドソーム輸送が重要であることが示唆された。 以上のことから、研究は当初の計画通り進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に計画している研究の実験方法は、これまでに当研究室で用いられているため、迅速かつ確実に行うことができる。 ウイルス感染細胞を用いたウイルス蛋白質(ORF2およびORF3)と細胞小器官との局在の解析においては、発現プラスミドも作製済みであり、状況に応じた使い分けが可能である。 膜成分の同定に関しては、膜に覆われたウイルス粒子を抗原として得られたマウスモノクロナール抗体を用いて、宿主細胞内での抗原の局在を蛍光抗体法により検討した結果、共局在を示す抗原を同定することができた。今後は、この抗原に対する抗体と膜に覆われたHEV粒子との反応性を検討する予定である。一方で、我々のこれまでの解析により、HEV粒子の放出にはMVB pathwayが重要であることに加え、ORF3蛋白質がMVBのマーカー蛋白質であるCD63と共局在を示すことを見出した。これらの知見は、HEVが細胞質内のエンドソーム膜に出芽し、エンベロープを獲得した成熟ウイルス粒子がMVB内に存在すること、さらにHEVの成熟粒子が、MVB内に共存しているエキソソームとともに細胞外に分泌される可能性を示唆している。以上の考察から、膜に覆われたHEV粒子と抗CD63抗体ならびにエキソソームのマーカー蛋白質に対する抗体との反応性についても解析を進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
膜に覆われたウイルス粒子を抗原として得られたマウスモノクロナール抗体を用いて、細胞内での抗原の局在を蛍光抗体法により解析した結果、共局在を示す抗原を同定することができた。そこでH24年度は、その抗原に対する抗体とウイルス粒子を反応させ、その後で膜に対する抗体でウイルス粒子を捕捉できるかをイムノキャプチャーRT-PCR法により検討する。同じ抗原を認識しているのであれば、競合し捕捉できなくなると考えられる。また、抗CD63抗体ならびにエキソソームのマーカー蛋白質に対する抗体との反応性についても、同様の方法で検討を行う予定である。さらに、細胞小器官に対する各種ウサギポリクローナル抗体を固相化し、培養上清中HEV粒子を捕捉できるか否かについても検討する。これらの解析により、ウイルス粒子表面に存在する膜成分の抗原性を明らかにする。 粒子形成に関わる細胞内膜輸送系の解析については、すでに得られたエンドソーム輸送を阻害する薬剤を用いた解析結果に加え、ウイルス蛋白質(ORF2およびORF3)と細胞小器官との局在を網羅的に解析することにより、関与する輸送系を明らかにする。 以上の計画から、経費の主要な用途は、蛍光抗体法やイムノキャプチャーRT-PCRで使用する各種抗体ならびにリアルタイムPCR用試薬が中心となる。その他、細胞培養に必要な試薬、チャンバースライドなどのプラスチック器具、分子生物学用試薬の購入が必要である。また、学会で研究成果を発表するための出張経費として、一部を使用する予定である。
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Research Products
(3 results)