2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内適応変異導入によるJFHー1株以外の新規C型肝炎ウイルス感染増殖系の樹立
Project/Area Number |
23790513
|
Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
村山 麻子 国立感染症研究所, ウイルス第二部, 研究員 (40415534)
|
Keywords | C型肝炎ウイルス |
Research Abstract |
本研究ではJFH-1株以外のウイルス株を用いた新規HCV感染増殖系の樹立を目的としている。本年度は遺伝子型2aのJ6CF株を用いた感染増殖系の樹立を目指し研究を行った。 遺伝子型2aのJ6CF株は、NS3ヘリカーゼ領域(N3H)とNS5B-3’X領域(N5BX)をJFH-1株に置換するとウイルス産生が可能であった(Murayama et al., JVI 2007)。さらに、NS5B-3’X領域のJFH-1株への置換は、NS5B領域内の3つのアミノ酸置換と、3’UTR内の塩基置換で代用することができることを示した(Murayama et al., PLoS Pathog 2010)。そこで、本年度はJ6CF株を培養細胞で複製可能にする最少の変異を同定することを目的とした。JFH-1株とJ6CF株のキメラ株(J6/5BSLX-JFH1; JFH-1株の5BSL-3’X領域を持つJ6CF株)を作製した。J6/5BSLX-JFH1株は一過性に遺伝子導入しても複製は確認できないが、遺伝子導入細胞を二ヶ月間継代培養することにより、感染性ウイルス産生が見られた。ウイルスゲノムのシークエンス解析により、NS4A領域の変異が同定され、この変異と以前に同定したNS5B内、3’UTR内の遺伝子置換とを組み合わせたJ6m株は培養細胞中で複製し、感染性ウイルス産生が可能であった。NS4Aの変異が複製にどのように関わるかについては、現在解析中である。 昨年度に樹立したMA株の感染増殖系に続き、さらにJFH-1株以外のウイルス株を用いた感染増殖系が樹立できたことにより、HCVの生活環における遺伝子型またはウイルス株による差異や、薬剤感受性の違いについての比較検討が可能となった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、遺伝子型2aのウイルス株(J6CF株)を改変したJ6CF変異株を作製し、この変異株を用いた新規HCV感染増殖系を樹立できた。このJ6CF変異株の情報を国際特許出願した(国際出願番号:PCT/P2012/064070)。新たに同定したNS4A領域の適応変異がHCV複製にどのように関わるのかについては、既存の実験系では結果が得られなかったが、最近になって、新規のプロテアーゼアッセイ系が利用できるようになったため、現在、導入準備をしており、未だ詳細な解析は終了していない。以上のことから、平成24年度は計画よりやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は遺伝子型2aのJ6CF株を培養細胞で複製、ウイルス産生可能にする変異として、新たにNS4A領域の変異を同定した。この適応変異がHCVライフサイクルに及ぼす影響について解析したところ、この遺伝子変異を導入することにより、複製ができるようになることから、NS4Aの変異はHCVのゲノム複製過程に関わっていると考えられた。NS4AのHCV複製における機能として知られているものは、1) NS3蛋白質を膜に局在化させる機能、2) NS3プロテアーゼのコファクターとしての機能が挙げられ、NS4A領域の適応変異がこれらの機能に影響を及ぼす可能性が考えられる。この変異の作用点を解析するために、NS3蛋白質の局在にNS4Aの変異がどのように影響するかについて解析したが、明らかな変化は観察されなかった。Huh7OK1/TG-luc細胞 (Tanaka et al, Microbiol Immunol 2010) を用いてプロテアーゼ活性の比較を試みたが、このシステムでは、切断効率をHCV由来ではない配列を用いて評価するため、変異の影響を正確に評価することができなかった。最近になり新たにプロテアーゼ活性を解析する系として、AlphaScreen を用いたin vitro 解析が利用可能となった。そこで、現在必要なコンストラクト等を準備しているところである。今年度はAlphaScreen を用いたプロテアーゼアッセイを行い、この解析によって得られた結果を含めて、学会発表および論文投稿を予定している。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費の内訳は、消耗品費として40万円、旅費として20万円、謝金等で10万円、その他で10万円を予定している。消耗品として、HCV感染細胞培養関係のプラスチック製品、HCV core 測定キット、HCV RNA測定試薬等の購入を予定している。研究成果発表のための旅費としては、国内学会 (日本ウイルス学会、分子生物学会)の交通費および学会参加費での使用を予定している。謝金等は実験補助および投稿論文校正などに、その他は通信費および投稿料などに使用予定である。
|
Research Products
(10 results)
-
-
[Journal Article] Novel cell culture-adapted genotype 2a hepatitis C virus infectious clone.2012
Author(s)
Date T, Kato T, Kato J, Takahashi H, Morikawa K, Akazawa D, Murayama A, Tanaka-Kaneko K, Sata T, Tanaka Y, Mizokami M, Wakita T
-
Journal Title
J Virol.
Volume: 86(19)
Pages: 10805-20
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-