2011 Fiscal Year Research-status Report
樹状細胞オートファジーによる腸管粘膜免疫系ホメオスターシスの制御
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23790528
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
手塚 裕之 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (30375258)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 樹状細胞 / オートファジー / 腸内常在菌 / IgA / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
平成23年度は、腸管樹状細胞(DC)における構成的オートファジーの生理的役割についての検討をおこない、以下の成果が得られた。 まず、DCのみにオートファジーが誘導されない(ATG5-DCKO)マウスを作製した。具体的には、ATG5-flox/floxマウスとCD11c-creマウスの交配を繰り返すことで、ATG5-DCKOマウスとその対照(ATG5-flox/flox)マウスが同腹仔として生まれる系を確立し、これらマウスを以下の実験に供した。定常状態における腸間膜リンパ節DC内の腸内常在菌の有無をqPCR法で検出したところ、対照マウスと比較してATG5-DCKOマウスではEnterococcusが多く存在していた。この結果から、ATG5-DCKOマウスでは抗体生産が亢進していることが予測されたが、同マウスの血清および糞便IgA量や血清IgG1量は正常であった。また、腸管粘膜固有層および腸間膜リンパ節のDCサブセットの頻度も正常であった。定常状態では構成的DCオートファジーの重要性が認められなかったので、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の飲水投与による炎症性腸疾患モデル(DSS大腸炎)を適用し検討をおこなった。その結果、DSS投与期間中はATG5-DCKOマウスおよび対照マウスともに経時的な体重減少、大腸出血、大腸短縮、上皮損傷、粘膜内リンパ小節形成など、DSS大腸炎に特有の症状を示した。興味深いことに、DSS投与終了後、対照マウスでは経時的な体重増加や大腸回復が観察されたのに対して、ATG5-DCKOマウスではこれら回復が著しく遅延することが判明した。また組織学的解析から、この回復遅延は上皮細胞の再構築(粘膜治癒)の遅延よるものであることが推察された。さらに、大腸炎を誘導したATG5-DCKOマウスでは腸管DCの頻度が著しく減少することも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主たる部分を担う遺伝子改変マウスは、当初の計画通り平成23年度内に作製することができ、現在は安定した生産が可能な状況にある。 これらマウスの解析から、定常状態における構成的なDCオートファジーが一部の腸内常在菌(Enterococcus)の細胞内捕捉機構に重要な役割がある可能性を示唆する結果が得られた。一方、平成24年度の実験計画予定であるIgA生産誘導機構についての予備実験をおこなったところ、DCにおける構成的オートファジーの欠如あるいはそれを原因とするDC内常在菌数の増加が定常状態のIgA生産レベルに影響を及ぼすことはなかった。この結果は当初の予想に反するものであり、申請時のIgA研究計画を継続することは困難であることから、研究内容の一部変更が必要であると判断した。 そこで申請者は、構成的なDCオートファジーの重要性は定常状態よりもむしろ炎症などの生体に負荷がかかった際に発揮されるのではないかと考え、炎症性腸疾患モデルであるDSS大腸炎を適用し検討をおこなった。その結果、ATG5-DCKOマウスでは大腸炎の回復が著しく遅延するという興味深い結果が得られた。さらに、その原因としては粘膜治癒の遅延による可能性が示唆されたことから、同研究課題は平成24年度も継続する価値があると思われた。 上述のように、平成23年度は申請時の計画とは異なる研究内容に一部変更したものの、変更後の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究成果から、構成的DCオートファジーは同細胞内における腸内常在菌の保持や炎症性腸疾患の回復期に重要な役割を担っていることが示唆された。その一方で、IgA生産については研究を継続するための十分な結果が得られなかった。また当初予定していた経口免疫寛容の研究(平成24年度計画)には、大量のOT-II Rag2欠損マウスを必要とするが、当該研究室の学内移設(平成24年3月)、それに伴うマウス飼育室(当該研究室保有)の縮小化により同研究の遂行が困難な状況にある。したがって、今後は炎症性腸疾患モデルの解析を継続したいと考えている。 これまで、炎症性腸疾患の原因は明らかにされていないが、その病態形成には腸内常在菌が重要であることが報告されている。この機序の詳細もまた不明であるが、平成23年度の成果から、腸管DCにおけるオートファジーの欠如が同細胞内での常在菌の長期生存あるいは大量捕捉を可能とし、これが炎症性腸疾患の粘膜治癒過程に重大な損傷を与えている可能性が考えられた。今後は、DSS大腸炎の回復期に焦点を絞り検討をおこなう。まず、腸炎回復期の大腸および腸間膜リンパ節のDCにおける炎症性サイトカイン生産や細胞内常在菌数をATG5マウス間で比較し、オートファジー関連分子LC3-GFPマウスの回復期においてオートファジーが誘導されているLC3陽性DCの局在や同DC内常在菌数を解析することで、腸炎回復におけるDCオートファジーと腸内常在菌との関連性を明らかにする。申請者は、骨髄細胞中に腸管指向性DCの前駆細胞である単球サブセットを見出している(未発表データ)。ATG5-DCKOマウスに対照マウス由来単球サブセットを移植することで、腸炎の早期回復に繋がるかどうか検討する。同時に、粘膜治癒機構におけるDCオートファジーの役割についても追求したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度の当該研究を遂行するにあたり、実験動物(マウス)に300千円、消耗品として細胞培養試薬(100千円)、抗体(250千円)、ELISAキット(100千円)、遺伝子関連キット(100千円)、プラスチック器具類(50千円)を予定している。また、研究成果の発表のための旅費として50千円、論文投稿費として50千円を予定している。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Prominent role for plasmacytoid dendritic cells in mucosal T cell-independent IgA induction2011
Author(s)
TEZUKA, H., ABE, Y., ASANO, J., SATO, T., LIU, J., IWATA, M., and OHTEKI, T.
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Journal Title
Immunity
Volume: 34巻
Pages: 247-257
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Prominent role for plasmacytoid dendritic cells in mucosal T cell-independent IgA induction
Author(s)
TEZUKA, H., ABE., ASANO, J., SATO, T., LIU, J., IWATA, M., and OHTEKI, T.
Organizer
第40回 日本免疫学会総会 学術集会記録
Place of Presentation
幕張メッセ
Year and Date
平成23年11月28日
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