2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790529
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中西 祐輔 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 特任講師 (20579411)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 好酸球 / 粘膜免疫 / 炎症性腸疾患 |
Research Abstract |
消化管に局在している好酸球に着目し、粘膜面の恒常性維持において果たす役割について検討を進めている。好酸球にはケモカインレセプターCCR3が特異的に発現しており、そのレセプターを介して粘膜面への浸潤を制御していることが知られている。まず、我々はCCR3のアンタゴニストを分与して頂き、それらをマウスに投与することによって、消化管に浸潤してくる好酸球の浸潤を抑制できるかを検討した。それらのアンタゴニストは喘息モデルにおいて、気管支粘膜面への好酸球の浸潤を抑制できることが知られているが、定常状態の消化管への浸潤は抑制できなかった。よって我々はこのケモカインレセプターの欠損マウスを購入し、解析することとした。 CCR3欠損マウスの消化管に好酸球が局在が少ないことをフローサイトメーターで確認した。しかし、購入可能であったマウスは、腸疾患のモデルとしては若干適さないBalb/cという遺伝的背景をもつマウスであったため、より適した遺伝的背景をもつC57BL/6に戻し交配している。 次に、炎症疾患における好酸球の役割を検討するため、潰瘍性大腸炎もモデルとして知られているデキストラン硫酸塩(DSS)をマウスに投与するモデルを用いて解析した。その結果、炎症部位である消化管には、多量の好酸球、好中球および単球が浸潤してきていることが明らかになった。更には、これらの浸潤は、腸内細菌の存在に依存していることが、抗生物質で腸内細菌を除去したマウスの解析から明らかとなった。 最後に、好酸球がどのように腸内細菌を認識するのかを検討するため、好酸球上に発現しているTLRについて検討した。グラム陽性菌を認識することが知られているTLR2およびグラム陰性菌を認識することが知られているTLR4ともに発現が認められなかった。よって、好酸球はTLRを介さず腸内細菌を認識していると推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究室を移転したことに伴い、その期間中の研究遂行に支障があった。また、CCR3欠損マウスの戻し交配により、このマウスを用いた炎症性腸疾患における好酸球の解析は遅れを伴っている。しかし、24年度に計画していた好酸球による腸内細菌認識機構を先行させて解析している。よって、トータルの研究計画はやや遅れているものの、挽回が可能な範囲と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
CCR3欠損マウスの戻し交配はほぼ終了しているので、これらのマウスにDSSを投与して、体重減少および組織学的所見を評価することにより、消化管粘膜面に局在する好酸球が炎症性腸疾患において果たしている役割について検討する。また、炎症性サイトカインを定量することにより、好酸球がどの程度、炎症疾患に関与しているかを検討する。 23年度の結果から、好酸球の浸潤は腸内細菌の存在に依存していることが明らかになった。本年度は、浸潤してきた好酸球の機能が、腸内細菌の存在下と非存在下でどのように違うのかについて検討する。このため、あらかじめ抗生物質で処理しておいたマウスにDSS腸炎を誘導し、大腸粘膜固有層よりセルソーターを用いて好酸球を精製する。その後、RNAを抽出し、炎症サイトカイン、脂質メディエーターおよびMBPの発現を定量PCRにより定量する。 最後に、好酸球における腸内細菌認識機構について検討する。昨年度の結果から、好酸球の細菌認識機構はTLRに依存しないことが示唆された。よって本年度は好酸球の貪食機能を中心に解析をおこなう。以上の研究計画を遂行することにより、炎症性腸疾患における好酸球の役割を明らかとし、新規の治療法の開発を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
既述のように、研究室移転に伴い一定期間、研究遂行に支障があったため、931千円の次年度使用額が発生した。24年度研究計画では、消耗品としてマウス代に1100千円を使用する。次に消化管の免疫細胞の分離およびその機能解析のために必要な試薬(抗体)に431千円、試薬(遺伝子発現の測定)に300千円をそれぞれ使用する。また、全ての実験を遂行するうえで必要となる培地および培養機器(チューブやチップ類)に700千円使用する予定である。
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