2011 Fiscal Year Research-status Report
PD-1と新規免疫制御分子の作用によるT細胞分化の制御
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23790534
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹馬 俊介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50437208)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫抑制 / 免疫寛容 / 自己免疫疾患 / がん免疫 / T細胞 |
Research Abstract |
PD-1は、T細胞(リンパ球)表面に発現し、生理的なT細胞の活性化の後、過剰な活性化を抑制する。PD-1は、これまでに明らかにした、IL-2サイトカインの産生調節以外に、体内でT細胞の活性化に重要な未知分子の発現抑制を行い、T細胞を機能的不応答に導くと考えている。当研究の目的は、PD-1によって不応答となったCD8陽性T細胞で、発現抑制されていた核内因子、ITAG-1のノックアウトマウスを用い、免疫学的および生化学的解析を用いて、当分子の機能を明らかにすることである。これまでの解析で、ノックアウトマウス由来のT細胞は、初期活性化には異常を示さないものの、試験管内で、キラーT細胞への最終分化に異常を示すことを見出している。ITAG-1は核内で、RCOR1や、LSD-1分子と会合することを見出しており、何らかの転写因子と会合することが考えられた。このような因子を探索する目的で、T細胞に発現する転写因子10種をPCR法でクローニングし、Flag-tagを付加してCMVプロモータに接続した。次に、これらを、ITAG-1のcDNAとともに293T細胞に移入し、タンパクの共発現を行った。抗Flag抗体で、転写因子を免疫沈降し、ITAG-1抗体のウエスタンブロッティングで、転写因子―ITAG-1間の分子会合を検討した。結果、2型ヘルパー細胞の分化促進因子として知られる、GATA-3が、ITAG-1と強く会合をすることがわかった。一方、CD8+T細胞の、キラー細胞への分化に関わることが報告されている、Tbx21, Prdm1, Bcl6は、ITAG-1と会合しなかった。GATA-3の、キラー分化における役割はよくわかっておらず、今後、CD8陽性T細胞におけるGATA-3と、ITAG-1の会合の重要性を明らかにすることが目標である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ITAG-1の生化学的解析は、モノクローナル抗体の作出、会合分子の同定ともに一定の成果をあげていると考えている。多数のITAG-1ノックアウトマウスを用い、モデル抗原を投与してin vivoでの免疫反応を評価する試みは、マウスの繁殖が予定よりおくれており、2年目の大きな課題である。一方、ITAG-1と同様のアプローチで解析した、TRIM28分子、およびノックアウトマウスの解析が予想以上に進み、論文報告することが出来たため(2012年4月現在印刷中)、全体としておおむね順調に進展している、と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
生化学的解析と並行して、ITAG-1マウスに、キラー誘導能があるモデルペプチドを免疫し、MHC ClassIテトラマーにて、誘導された抗原特異的CD8陽性細胞を検出する実験系を適用する。テトラマー陽性細胞を、既知のキラーT細胞のマーカーと多重染色し、最終分化したキラー細胞が産生されたのかを見極める。これまでの解析から、ITAG1 KOのCD8T細胞ではメモリー様細胞が多く産生されることが予想されるため、これを検出するためにメモリーT細胞のマーカー発現も検討する。また、免疫マウスのCD8T陽性細胞を分離し、抗原特異的なキラー活性の獲得能を測定する。ノックアウトマウスに、マウスがん細胞を移植し、抗腫瘍性を検討する。以上の手法を用い、ITAG1の、キラーT細胞分化における機能を検証する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスの維持費として、京都大学医学研究科動物実験施設が提示する、1ケージ/年あたりの維持費をもとに、H24年度は50ケージ分の支出を予定している。ノックアウトマウスのジェノタイピング、および表現型解析を行うため、合成オリゴ、PCR試薬、T細胞培地、抗体、マグネティックセルソーティング用試薬などを購入予定である。マウスの遺伝子型解析で使用しているPCR機が経年劣化(~10年)しており、新規購入(50万円程度)する予定である。旅費に関しては、研究成果発表のため、学会参加費を支出する。その他に、論文投稿のための費用を支出予定している。
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[Journal Article] Activation-induced cytidine deaminase expression in CD4+ T cells is associated with a unique IL-10-producing subset that increases with age.2011
Author(s)
Qin H, Suzuki K, Nakata M, Chikuma S, Izumi N, Huong le T, Maruya M, Fagarasan S, Busslinger M, Honjo T, Nagaoka H
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Journal Title
PLoS One
Volume: 6
Pages: e29141
DOI
Peer Reviewed
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