2011 Fiscal Year Research-status Report
補体セリンプロテアーゼMASP-1を標的としたループス腎炎の新規治療戦略
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23790542
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
町田 豪 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (80583632)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / MASP-1 / MRL/lpr / 補体第二経路 / ループス腎炎 |
Research Abstract |
MASP-1/3 KO B6マウスをMRL/lprマウスに戻し交配することで、MASP-1/3 KO MRL/lprマウスを作製した。戻し交配第3世代において、13種のマイクロサテライトマーカー全てがMRL/lprマウスのホモ型に置換された事をPCRにより確認した。このマウスをさらにMRL/lprマウスに戻し交配し、6世代目のマウス同士を自家交配させてMASP-1/3 KO MRL/lprマウスを得た。以下の実験はこの世代のマウスを用いて行った成果である。F7世代の野生型(2匹)およびMASP-1/3 KO(1匹)MRL/lprマウス(8週齢)の眼窩静脈叢から採血して血清を調製し、ザイモザンアッセイを行った。その結果、MASP-1/3 KO MRL/lprマウスは、既報のMASP-1/3 KO B6マウスと同様に第二経路活性を示さなかった。よって、目的とする第二経路活性を消失したSLEモデルマウスの作製が確認された。また、野生型MRL/lprマウス血清中の第二経路活性は、野生型B6マウス血清中の活性より高く、MRL/lprマウスの病態における補体第二経路の関与が示唆された。これらのマウスを24週齢にて屠殺し、脾臓・リンパ節を採取してFACSによる免疫担当細胞集団の解析を行った結果、T細胞・B細胞・マクロファージ・樹状細胞のポピュレーションに大きな変化は認められなかった。同週齢において腎臓を採取し、HE染色により解析した結果、MASP-1/3 KO MRL/lprマウスでは腎糸球体におけるメサンギウム領域拡大・半月体形成が緩和されていた。以上の成果より、MASP-1/3をターゲットとした第二経路阻害によるループス腎炎の治療戦略の有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
B6マウスからMRL/lprマウスへの戻し交配は順調に進行したが、MRL/lprマウスが我々の設定した最終解析週齢の24週齢までに50%死亡してしまう事に加えて、MASP-1/3ヘテロMRL/lprマウス同士の交配によりノックアウトマウスが生まれる確率が極めて低く、解析を行うに十分な検体数が得られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の問題点を解決するために、交配数の増加、幼少時の安定した里親の提供を現在導入しており、MASP-1/3 KO MRL/lprマウスが一定数確保できればそれを交配に使用して、MASP-1/3 KO MRL/lprマウス数をより効率的に増やせるよう検討している。また、MASP-1/3 KO B6マウスでは、骨・脂肪組織などの発達異常による成長抑制が報告されており、この変化が重篤な自己免疫疾患を起こすMRL/lprマウスではさらに影響が大きいために、十分な検体数を確保できない事も考えられる。今後、研究推進のためにNZM2410マウスなど他のSLEモデルマウスの導入も視野に入れており、MASP-1/3 KO B6マウスのNZM2410マウスへの戻し交配を開始している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在、8世代戻し交配を行ったMASP-1/3ヘテロMRL/lprマウスを得ており、今後の実験にはこれらのマウスを用いて自家繁殖させたマウス(F9世代)を用いる予定である。平成24年度は、MASP-1/3野生型・ヘテロ・ノックアウトMRL/lprマウス各12匹を確保し、12週齢から24週齢まで2週毎に眼底採血して血清を調製し、第二経路活性の消失・血中C3量・抗dsDNA抗体値を測定する。また、24週齢で屠殺して腎臓・皮膚をHE染色またはPAS染色して病理組織学的解析を行い、MRL/lprマウスにおける腎炎・皮膚炎の程度を評価する。同時に腎へのIgG・C3の沈着を蛍光免疫組織化学で評価する。さらにFACSを用いて、MASP-1/3 KOによる脾臓・リンパ節内の免疫担当細胞集団への影響についても検討する。
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