2011 Fiscal Year Research-status Report
ポリミキシン系抗生物質による新規粘膜アジュバント開発のための基礎的研究
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23790543
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
吉野 直人 岩手医科大学, 医学部, 准教授 (20372881)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫学 / ワクチン / 粘膜免疫 / アジュバント / 抗生物質 |
Research Abstract |
本研究は、安全性を最優先に考慮した新規粘膜アジュバントの研究開発である。そこで既存の医薬品に着目し、アジュバントの多くが自然免疫を刺激する作用を持つことから、肥満細胞に作用することが知られているポリペプチド系抗生物質を選択した。C57BL/6マウスにOVAとポリミキシン類を経鼻免疫し、血中および粘膜分泌液(糞便抽出液、唾液、鼻腔洗浄液、腟洗浄液)で特異IgG、IgA抗体をELISAにより測定した。また、粘膜関連組織(鼻咽頭粘膜関連組織、鼻腔粘膜固有層、腸管粘膜固有層、腸間膜リンパ節、唾液腺)と脾臓における特異抗体産生細胞数をELISPOT 法により計測した。ポリミキシンB投与群では、血漿中および粘膜分泌液中でOVA特異的抗体価の上昇が確認された。さらに、全身および粘膜組織においてもOVA特異的抗体産生細胞が観察された。これらは、コリスチンを投与したマウスでも同様の結果が得られた。即ち、ポリミキシン類が粘膜アジュバントとして粘膜および全身に抗原特異的抗体を誘導できることが示唆された。ポリミキシンのアジュバント作用を解析するため、コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムおよびポリミキシンBノナペプチドを用いて同様にマウスに投与した。コリスチンメタンスルホン酸ナトリウムはコリスチンの陽電荷を修飾し陰電荷にしたもので、ポリミキシンBノナペプチドはポリミキシンBの側鎖を切断したものである。これらを投与したマウスの血漿中および粘膜分泌液中でのOVA特異的抗体価はポリミキシンB群およびコリスチン群と比較して有意に低かった。また、ポリミキシン類はLPS結合能を持つためLPSに対する感受性の異なるマウス(C3H/HeN、C3H/HeJ)を用いて免疫を行ったところ、両者の抗体価に差はなくポリミキシンが常在菌を破壊しそこから放出されるLPSがアジュバント効果を持つのではないことが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って実験を行ったため、概ね順調に研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
ポリミキシンのアジュバント活性が明らかになったので、ワクチン効果と作用機序の解析を行っていく。ワクチン効果に関しては、毒素およびウイルスを用いてワクチン効果の検討を行う。腸管免疫効果を確認するため、アジュバントと共にCT Bサブユニットで免疫し、CTを経口投与し下痢の度合いを明らかにする。気管免疫効果を確認するため、アジュバントと共にインフルエンザワクチン抗原で免疫し、インフルエンザウイルスを経鼻で感染させ感染阻止効果を明らかにする。作用機序に関しては肥満細胞欠損マウス(WBB6F1-W/Wv、WBB6F1-Sl/Sld)を用い、作用部位の特定を行う。培養細胞を用い、in vitroにおいてポリミキシン類の作用を分子レベルで解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として120万円を実験動物(マウス)、ポリミキシン類試薬、抗マウス抗体(抗体価測定用、細胞分離用)作用機序解析用試薬(ヒスタミン測定、PCR関連試薬、タンパク電気泳動試薬ほか)、細胞培養・細胞分離用酵素試薬、プラスチック製品購入のために使用し、研究内容を国内学会発表するため旅費として6万円使用する。また、研究成果をまとめ論文を作成し国際雑誌に投稿するために英文校閲費、論文投稿料として14万円使用する計画である。
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Research Products
(4 results)