2011 Fiscal Year Research-status Report
CD8陽性T細胞におけるヒストン修飾による機能及び分化制御の解明
Project/Area Number |
23790544
|
Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
荒木 靖人 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10580839)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 免疫学 / エピジェネティクス / T細胞 |
Research Abstract |
CD8陽性T細胞の分化及びエフェクター機能がどのように制御されているかはいまだ不明である。申請者らはエピジェネティックス機構の中でもヒストン修飾(ヒストンアセチル化・メチル化)による遺伝子発現の制御が、CD8陽性T細胞の機能・分化において重要であることを報告してきた。本研究では、ヒストン修飾がどのようにCD8陽性T細胞において制御されているかを調べるために、CD8陽性T細胞の機能・分化に重要な役割を持つヒストンメチル化修飾酵素の同定及び機能の解析を行っている。まず、メモリーCD8陽性T細胞で特異的に発現しているヒストンメチル化修飾酵素の同定するために、マウスCD8陽性T細胞からナイーヴ細胞(CD62L陽性、CD44陰性)とメモリー細胞(CD62L陰性、CD44陽性)を分離した後、total RNAを抽出し、cDNAを作成した。これらのcDNAを用いて、ヒストンメチル化酵素とヒストン脱メチル化酵素の遺伝子発現を定量的PCR法にて比較したところ、メモリーCD8陽性細胞において特異的に発現している酵素としてヒストンメチル化酵素Ezh2とNsd1、ヒストン脱メチル化酵素Fbxl10を同定した。現在、これらの酵素の遺伝子発現をshRNA法を用いて抑制する実験系を確立しているところである。また、同時にCD8陽性T細胞の機能・分化において重要な転写因子であるEomesの結合部位とヒストンメチル化(H3K4me3)の関連を、エフェクター分子のPerforinのプロモーター領域においてクロマチン免疫沈降により調べた。その結果、Eomesが結合している部位ではH3K4me3量が多い事が判明した。これらは、CD8陽性T細胞におけるヒストンメチル化の制御ネットワークの解明につながる重要な結果であるとかんがえられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において一番重要な実験であるマウスCD8陽性T細胞機能・分化において重要な役割を果たすヒストンメチル化修飾酵素の同定は終了した。続いて、同定した酵素の遺伝子発現を抑制する実験系を構築している所である。マウスCD8陽性T細胞に遺伝子を導入するためにレトロウイルスを用いたところ導入効率が悪く、アデノウイルスを用いたところ細胞傷害が起こり、いずれも本実験には適さないと考えられた。レンチウイルスベクターpLKO.1を用いてGFP遺伝子を導入したところ、効率は良好であった。今後、レンチウイルスを使ってヒストンメチル化修飾酵素のknock down実験を行う予定である。また、ヒストンメチル化修飾酵素複合体の同定の予備実験として、この複合体を形成する分子の候補の一つであるEomesに関して検討を行った。その結果、CD8陽性T細胞のエフェクター分子であるPerforinのプロモーター領域において、Eomesの結合部位のH3K4me3量は多い事が分かった。この事から、Eomesとヒストンメチル化酵素が共同して働いている事を示唆される。以上より、本研究はおおむね計画通りに進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
マウスCD8陽性T細胞機能・分化において重要な役割を果たすヒストンメチル化修飾酵素の機能、ヒストンメチル化修飾酵素が形成する複合体、その複合体中の分子のCD8陽性T細胞における機能の解明を調べる予定である。これらの結果は、CD8陽性T細胞におけるヒストンメチル化の制御ネットワークの解明につながる。細胞分化の一つのモデルとしての末梢血液中のCD8陽性T細胞を用いて、ヒストンメチル化を調節するエピジェネティックス機構を明らかにする事により、将来的にCD8陽性T細胞の分化・機能を人為的に操作する事が可能になると申請者は考えている。CD8陽性T細胞はウイルス免疫、腫瘍免疫の主要なエフェクター細胞である。本研究の結果からは、様々なウイルスに対するワクチンの効率的な作成、CD8陽性T細胞による腫瘍への攻撃を強める免疫治療などへの臨床応用が期待される。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
マウスCD8陽性T細胞機能・分化において重要な役割を果たすヒストンメチル化修飾酵素の機能の解明:同定したヒストンメチル化修飾酵素発現をマウスCD8陽性T細胞においてレンチウイルスを用いてshRNA法により抑制し、転写因子(Eomes、T-bet、Blimp-1など)やエフェクター機能分子(Gzmb、Prf1など)の発現の変化をmRNAレベルや蛋白レベルで調べる。同時にshRNAを導入した細胞におけるヒストンメチル化の量を解析し、上記の遺伝子や蛋白の発現変化と相関があるかを確認する。 同定したヒストンメチル化修飾酵素の複合体の解明:ヒストン修飾酵素は転写因子、DNAメチル化酵素、他のヒストン修飾酵素と複合体を作り、標的遺伝子の発現を制御している。ヒストンメチル化修飾酵素と結合している蛋白を、免疫沈降法とウェスタンブロティング法を組み合わせる事により同定する。 同定したヒストンメチル化修飾酵素複合体のCD8陽性T細胞における機能の解明:CD8陽性T細胞を活性化した時に、ヒストンメチル化修飾酵素複合体がどの遺伝子のプロモーター領域と結合しているかを時間経過を追って調べ、その結合による遺伝子発現のダイナミズムを定量的PCR法により解析する。具体的には、クロマチン免疫沈降法により、ヒストンメチル化修飾酵素複合体(中の分子)とエフェクター機能分子遺伝子のプロモーター領域との結合を調べる。抗CD3/CD28抗体による刺激後に、複合体とプロモーター領域の結合変化と遺伝子発現変化との関連も調べる。さらに、shRNA法を用いてヒストンメチル化修飾酵素複合体中の分子の発現を抑制する事により、CD8陽性T細胞の機能(転写因子やエフェクター機能分子の発現)が制御されるかどうか検討する。
|
-
-
-
-
[Presentation] Histone methylation is associated with MMP gene expressions in rheumatoid arthritis synovial fibroblasts.2011
Author(s)
Araki Y, Yokota K, Sato K, Miyoshi F, Wada T, Kim YT, Oda H, Mimura T
Organizer
The 4th East Asian Group of Rheumatology (EAGOR2011)
Place of Presentation
Keio Plaza Hotel Tokyo, Tokyo, Japan
Year and Date
October 15, 2011
-
[Presentation] Dynamic changes of gene expression in concordance with histone modifications in CD8 T cells after activation.2011
Author(s)
Subedi K, Araki Y, De S, Wood W, Sharov A, Zang C, Schones D, Lhotsky B, Dudekula D, Becker K, Ko M, Peng W, Zhao K, Weng NP
Organizer
98th The American Association of Immunologists Annual Meeting
Place of Presentation
the Moscone Center, San Francisco, California
Year and Date
May 13, 2011
-