2011 Fiscal Year Research-status Report
MHCクラスIIによるメモリーCD8T細胞恒常性維持機構の解析
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23790549
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸口 留可 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50415204)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 免疫記憶 |
Research Abstract |
通常の免疫反応では、抗原によって感作されたことのないナイーブCD8T細胞が外来抗原に反応し増殖した後、大部分が細胞死を起こす一方、少数のCD8T細胞が生き残り、もう一度同じ抗原に遭遇した際、素早く効率的に免疫反応を起こす。このように外来抗原が生体内から除去された後でも長く免疫系に存在し、再刺激により素早くエフェクター機能を発現するという2つの特徴を持つCD8T細胞がメモリーCD8T細胞である。メモリーCD8T細胞の存在数を生体内で維持する外因性因子の1つとしてCD4T細胞によるヘルプが報告されていたが、申請者は、メモリーCD8T細胞をMHCクラスII欠損マウスに移入した場合メモリーCD8T細胞の数は減少するが、ThPOK欠損マウス、CD4欠損マウスおよび抗CD4抗体を用いてCD4T細胞を除去した野生型マウスに移入した場合は、そのようなメモリーCD8T細胞の減少は起こらないことを見出した。これは、MHCクラスII欠損マウスにおいてメモリーCD8T細胞が生存を維持できないのは、CD4T細胞が欠損しているためではなく、MHCクラスII分子を欠損している細胞の機能異常のためであることを意味している。本研究ではこのメカニズムにアプローチするためにどの細胞が発現するMHCクラスIIが重要かを検討した。まず非血球系と血球系で発現するMHCクラスII、どちらがメモリーCD8T細胞の恒常性に重要かを、骨髄キメラを用いて検討したところ非血球系は必要ではないことが明らかになった。さらにB細胞欠損マウスとMHCクラスIIの骨髄キメラによりB細胞が発現するMHCクラスIIも必須ではないことを見出した。以上の結果より樹状細胞またはマクロファージが発現するMHCクラスIIが重要である可能性が高まった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理化学研究所から京都大学へ移動したため、遺伝子組み換え実験の承認を取り、マウスのコロニーを再構成させる必要があった。これらのプロセスに予想以上に時間がかかってしまったため、予定よりも進抄が若干遅れ気味である。今現在、樹上細胞上のMHCクラスIIが重要かを検討するための実験系の確立を行っている。原因細胞が同定された後は研究は進んでいくと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
骨髄キメラを用いた実験により原因細胞の絞りこみを行う。同時にメモリーCD8T細胞が生体内でMHCクラスIIを発現するどの細胞と接触しているのかを免疫染色の技法と共焦点顕微鏡を用いて観察する。正常マウスとMHCクラスII欠損マウスにおけるメモリーCD8T細胞の局在も比較検討し、メモリーCD8T細胞が特異的な局在を示すのかどうかも検討する。原因細胞が特定できた場合は、正常マウスとMHCクラスII欠損マウスでの遺伝子発現の違いを網羅的に比較検討する。また正常マウスとMHCクラスII欠損マウスにおけるメモリーCD8T細胞の遺伝子発現の差異も網羅的に検討する。以上の方法により内因的または外因的なメモリーCD8T細胞の数の維持機構のメカニズムに迫る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
網羅的遺伝子発現の解析により、メモリーCD8T細胞の数の維持に重要な分子の候補が絞り込めた場合、候補分子のノックダウンや過剰発現のためのコンストラクトの作成を行う。これを円滑に行うためにPCRマシンの購入の必要性がある。
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