2011 Fiscal Year Research-status Report
M細胞欠損マウスを用いたM細胞の生体内における存在意義の解明
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23790550
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
金谷 高史 独立行政法人理化学研究所, 免疫系構築研究チーム, 基礎科学特別研究員 (20553829)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 国際情報交流 |
Research Abstract |
マウスへRANKL投与は、通常M細胞の存在しない絨毛上皮に異所性のM細胞分化を誘導する。このことを活用し、M細胞に高発現する転写因子を同定することに成功した。この転写因子を欠損するマウス(以後KOマウスとする)では、GP2陽性のM細胞が消失する。初年度は、このKOマウスのM細胞欠損モデルとしての有用性の評価に着手した。まず、KOマウスにおいてGP2陽性M細胞は完全に消失するが、M細胞分化の初期から発現するM細胞マーカーであるMarcksl1陽性細胞が消失しないことに着目した。GP2はM細胞において、抗原取り込みを担う受容体として機能することから、KOマウスに存在するMarcksl1陽性細胞はM細胞としての機能が欠損すると推測した。KOマウスにおいて、M細胞の特徴である抗原取り込み能の測定および電子顕微鏡による形態観察を行った。その結果、予想通りKOマウスのMarcksl1陽性細胞では抗原取り込み能が欠損し、形態学的にM細胞と判断出来る細胞は存在しなかった。このことから、KOマウスはM細胞欠損モデルとして有用であることが示された。次にKOマウスを用い、M細胞欠損による腸管免疫応答への影響を評価するための実験系確立に着手した。ネズミチフス菌(S. Thypimurium)はM細胞から取り込まれ、その結果S. Thypimurium特異的な免疫応答が誘導される。そこでS. Thypimurium特異的に反応するSM1-T細胞をKOマウスへ移入後、S. Thypimuriumを経口的に感染させ、パイエル板におけるSM1-T細胞の活性化を解析した。その結果、KOマウスのパイエル板では野生型マウスと比較してSM1-T細胞の活性化が著しく減少した。このことからKOマウスではM細胞が欠損するため、抗原特異的な免疫応答を十分に惹起させることができないと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・KOマウスのM細胞欠損モデルとしての有用性を示すことができた。・S. Thypimurium特異的に応答するSM1-T細胞を移入することにより、抗原特異的な免疫応答を評価する系を確立した。・確立した評価系を用いることでKOマウスにおけるM細胞欠損の生体への影響を評価することが可能となった。以上のことから初年度に計画した研究項目から想定した以上の研究成果が得られた考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)骨髄キメラマウスの作成:本研究で用いているKOマウスは、野生型マウスと比較して免疫系の細胞の分化や機能に異常が現れることが懸念されるため、野生型マウスの骨髄細胞を移植した骨髄キメラマウスを作成し、免疫応答への影響を評価する必要がある。初年度において骨髄キメラマウスの作成に着手しているが、当初の予想より多くのマウスが必要となったため、引き続き骨髄キメラマウスを作成する。(2)抗原特異的IgA産生におけるM細胞欠損の影響の解析:初年度の研究成果により、M細胞欠損がS. Thypimurium特異的な免疫応答影響を及ぼすことが示された。そこで腸管における抗原特異的な免疫応答の最終的な産物である、抗原特異的IgA産生への影響を評価する。S. Thypimuriumをマウスへ感染させた後3~4週間後に糞を採取し、S. Thypimurium特異的IgAの産生をELISAで検出する。(3)病原性微生物の感染におけるM細胞の危険性の評価:M細胞は腸管免疫において外来抗原の取り込みおよび抗原提示細胞への抗原伝達という重要な役割を果たすと考えられる一方で、様々な病原性微生物の侵入口となるとされる。Y. enterocoliticaはM細胞から感染する病原性微生物の一種であり、M細胞数が減少すると感染が成立しない可能性が示唆されている。今までM細胞欠損モデルが存在しなかったため、感染におけるM細胞の存在意義を厳密に評価することが出来なかった。本項目では確立したM細胞欠損モデルマウスを用い、Y. enterocoliticaの感染におけるM細胞の存在意義を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用計画マウス:200000円、フローサイトメトリー解析用抗体:400000円、細胞調整用試薬(酵素):200000円、ELISA用試薬:200000円平成23年度に103万円の未使用額が生じた。これは初年度の研究遂行に必要な試薬のうち所属機関に既に購入されていたものがあったこと、また研究が思った以上にスムーズに展開したため消耗品の購入を抑えることができたことが原因である。次年度の研究計画はより多くの消耗品を使用することが予測されるため繰り越しして使用することとした。次年度の使用計画は以下に示した。免疫組織化学染色用抗体:300000円、In situ hybridization試薬:400000円、PCR関連試薬:330000円
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