2013 Fiscal Year Research-status Report
再生医療研究における被験者保護について:「治療であるとする誤解」を中心に
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23790565
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩江 荘介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80569228)
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Keywords | 被験者保護 / 研究倫理 / 医療倫理 / 治療とする誤解 |
Research Abstract |
本年度は、研究倫理の実務的視点から被験者保護、治療とする誤解(therapeutic-misconception)というものを考えた。ここでいうところの研究倫理の実務とは、研究倫理審査に関する実務のことである 倫理委員会事務局の業務で申請書類の点検を行っている中で、臨床研究であるが治療であるようなイメージを被験者に持たせるようなデザインや書きぶりをしばしば目にする。例えば説明文書において、臨床介入研究では治療的均衡(clinical equipoise)に配慮しなければならないのに、プロトコール治療の利益を全面に出すような書きぶりを見受けることがある。被験者に治療的期待を不必要に与えないために、ケースとコントロールの2群間における治療的利益を均衡させるため、研究計画書のどの箇所のどの点に注目すべきか、また明確に説明させるべきか、について実務レベルで学習した。 また、臨床研究指針では、「予測される当該臨床研究の結果、当該臨床研究に参加することにより期待される利益」がインフォームド・コンセントへの必須記載事項とされている。しかし、「予測される」や「期待される」というのを記述通りに受け止めてしまうと、予測や期待の範囲が広く解釈され、被験者である患者に不必要な期待を抱かせる可能性が危惧される。その場合であっても、多くはガイドラインの逸脱と認識されることはない。 そこで論点として見えてきたのは、倫理審査においては、文書化されたり制度化されたりした倫理と、申請者などとのコミュニケーションを通じて形成していく倫理があるということである。 以上、実務を通じて「治療とする誤解」の概念を検討した結果、生命倫理の実践には、「手続としての生命倫理」と「研究者と被験者の協同作業としての生命倫理」の2つの方法論があることが明らかになった。これを本年度の成果とし、来年度の研究計画の策定に盛り込むつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
特定講師というポストにつき、倫理委員会事務局という専任業務の合間の研究活動である。そのため、研究活動を専任業務とリンクさせて行うことにした。したがって、研究計画を大幅に変更したことに伴い進捗が遅れ、一年間の期間延長を願い出た次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初から掲げている、再生医療の臨床応用における「治療とする誤解」の探求については継続する。しかし、アプローチの方法については変更せざるを得ない。 例えば、当事者へのインタビュー調査やワークショップを予定していたが、専任業務の関係で外勤時間が限定されており、それらを文献研究、政策調査あるいはアンケート調査などに切り替えて行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗が遅れから、研究期間を1年間延長したため。 最終年度は、アンケート調査などの比較的高額支出を見込んでいる。
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Research Products
(1 results)