2014 Fiscal Year Annual Research Report
再生医療研究における被験者保護について:「治療であるとする誤解」を中心に
Project/Area Number |
23790565
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩江 荘介 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80569228)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 再生医療 / 臨床研究における倫理的問題 / 治療であるとする誤解 / 研究倫理支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度目と2年度目では、「治療とする誤解」やインフォームド・コンセントについて理論や原理原則の解明に重点を置いた。3年度目からは、本務で研究倫理支援業務に従事した関係もあり、医学研究者たちによる倫理審査や倫理指針への対応を観察する中で、彼らが倫理的問題へ「制度的に」十分適応していることを発見した。しかしながら、「治療とする誤解」の主要因とされるインフォームド・コンセントの不十分な実施が問題視され続けていた。そこで、「「制度・手続を通じて実現する生命倫理」と「当事者間のコミュニケーションなど実践を通じて実現する生命倫理」の間のズレ」という問題が、その背景に存在することを指摘した。 最終年度では、3年目に引き続き研究倫理支援実務の視点から、「治療とする誤解」をはじめとする臨床研究における倫理的問題について考察した。折しも3年目後半から最終年度にかけて多くの研究不正に関する事案が報道され、臨床研究の信頼性について社会的議論となった。その状況は本課題に少なからず影響を与え、倫理的問題と政策上の不備を結びつける視点を見出すことができた。 例えば、多くの研究者が倫理審査までの段階では審査を通過するため倫理的な諸問題に注意を払うが、承認後の適正な研究実施については研究者の良心に専ら委ねられることになっている。そのことが、上述した生命倫理における制度と実践のズレを生じさせ、研究の不適正な実施を生む背景要因の一つであると考えた。さらにその要因は、研究者個人の良心だけの問題ではなく、制度と実践が連携しない状態を生み出している政策の不備にあると最終年度の研究成果の中で指摘した。 研究期間を終えた今、生命倫理の実現にとっては制度と実践の結びつきが極めて重要であることを認識した。今後は、研究倫理支援業務が両者の結びつきと交互作用を促進する可能性と方策について更に考察を進めたい。
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Research Products
(4 results)