2012 Fiscal Year Research-status Report
小児患者における鎮静に伴う有害事象の低減を目的とするガイドラインの開発
Project/Area Number |
23790569
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 りょう子 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (20467559)
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Keywords | 医療安全 / ガイドライン / 鎮静 / 小児 / 教育 / 医療安全教育 / ヒューマンファクターズ / シミュレーション |
Research Abstract |
本研究は、医療安全の観点から、教育病院における小児の鎮静の安全な実施のためのガイドラインを開発するものである。 平成24年度には、小児における鎮静の実施状況、有害事象の経験及び指針の整備状況について、平成23年度に作成した質問票を用いて国立大学病院の医療安全管理者に対して聞き取り調査を行った。調査結果の分析により、小児の鎮静に関する有害事象は各施設で経験されていること、鎮静の実施者の専門性や経験レベルが一定でないこと、及び成人・小児を問わない鎮静の注意事項を定める施設はあることが明らかになった。これらの調査結果については、第115回日本小児科学会学術集会において発表した。 さらに、ガイドラインに含むべき実施体制及び教育については、米国サンディエゴ海軍病院、米国医療職教育学会、英国ロンドン小児病院、仏国パリアメリカン病院において調査を行った。英米仏の諸国において、小児の鎮静は主に専門担当者を定めて実施されており、これらの専門担当者への鎮静に関する教育は、診療契約や勤務評定等のインセンティヴによって必須化されていた。担当者の職種は、麻酔、集中治療、病棟専門小児科を専門とする医師、あるいは看護師であった。看護師による鎮静は、米国では単独で、英国・仏国では医師の監督下に実施されていた。必須教育の内容には、鎮静薬に関する知識及び基本的な気道管理が含まれていた。 以上の結果を踏まえ、小児の鎮静実施者に必須と考えられる項目を知識編、鎮静の注意点編の2つにまとめ、eラーニング教材として大阪大学医学部附属病院の小児医療従事者を対象に公開し、内容評価のアンケートを行った。知識編を612人、鎮静の注意点編を567人が受講し、わかりやすい(それぞれ97%、92%)、診療の役に立つ(それぞれ94%、95%)との評価を受け、これらの項目を反映させたガイドライン案作成に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の第2年度である平成24年度には、国内及び諸外国における鎮静の実施体制、及びそのために必要な教育内容と教育体制について調査を行った。さらに、教育コンテンツの作成、試行及び評価を実施し、これらに基づきガイドライン案の作成に着手した。 鎮静の実施体制については、当初予定していた国内大学病院における医療安全管理者を対象とする調査を実施し、それにより、成人・小児を問わない鎮静一般を超えては、小児に特化した安全確保の整備が行われていないこと、及びその実施体制は各施設のリソースにより異なることを明らかにした。これに加えて、諸外国のガイドラインを実施するための体制について、米英仏の3か国における調査を行い、その結果、体制整備のためには、リソースによるだけでなく、対象者を限定し必須化した教育が必要であることを明らかにした。さらに、これらの調査に基づき、その教育内容を特定し、鎮静薬に関する知識及び実施上の注意点に分けた教材を作成し、大阪大学医学部附属病院において試行し、評価を行った。 以上の成果から、鎮静の安全確保に係る実施体制、そのために必要な教育内容について明らかにするとともに、これらの成果をもとに教育コンテンツを作成・試行・評価し、ガイドライン化すべき最小項目の抽出及びガイドライン案の作成に着手した。 以上から、本研究は、第2年度における実施計画及び明らかにする事項を達成しており、当初の計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、平成23年度及び24年度の研究結果に基づき、小児の鎮静の安全確保について、ガイドライン化すべき最小項目を抽出し、ガイドライン試案を開発する。ガイドライン試案開発においては、諸外国における人的及び設備的リソースと国内の大学病院のリソースの差異を勘案し、医療安全対策の柱であるヒューマンファクターズの考え方を導入する。 また、ガイドラインと併用すべき教育の実施方法や体制についても検討を行い、その教育の内容を、平成24年度の教材試行・評価に基づき、改良を図る。ガイドライン試案及び教材については、大阪大学医学部附属病院において試験的に導入し、実施状況及び順守状況調査を実施することにより、医療現場における適用可能性及び改変の必要性等について検討する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、研究推進のために、小児の鎮静、医療安全、鎮静における有害事象予防及び対処に関する小児急性期医療、気道管理、シミュレーション教育等に関する書籍や、平成24年度までのデータ保存用のポータブルハードディスク等の電子消耗物品を必要とするため、購入予定である。 旅費については、国内で開催される小児医療及び医療の質に関する学会(日本小児麻酔学会、医療の質・安全学会等)において、また、医療の質・安全に関する国際学会において、成果発表を予定している。 また、研究成果について論文発表を行い、報告書を作成するための経費を計上している。 以上の通り、これらの費目について、平成25年度の研究計画に沿って、計画的かつ適切に執行する予定である。
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