2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790576
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Research Institution | Tohoku University of Community Service and Science |
Principal Investigator |
鎌田 剛 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (50438595)
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Keywords | 国際情報交換 / 国際研究者交流 / 地域医療連携 / ナレッジマネジメント |
Research Abstract |
地域医療連携の実践モデルを構築するための事例調査について、今年度は、中華人民共和国黒龍江省ハルビン市における先駆的な介護系企業の調査を中心に実施した。事例企業である「Bany Services」は、ハルビン市内72ヵ所で中低所得者向け小規模老人ホームのボランタリ・チェーンを展開している。ボランティア団体を前身として2006年に創業した同社は、「高齢者を支える社会の仕組みを探索すること」を理念とする。従業員1000人を抱え、前述の小規模老人ホーム事業を中心として、生活相談・緊急通報コールセンター事業(登録利用者4万人,一日あたりインバウンド2000件)、介護・家政人材養成事業(年間2000人輩出)、人材派遣事業(介護人材・家政婦各2000人規模)などを展開する。また、介護系企業では同国で唯一「双軟企業」(ハイテクソフト開発認定業者)およびISO9001認証を取得しており、自社開発したグループウェアを用いて利用者台帳や人材管理システムを運用している。政府からの信頼も厚く、中国東北部最大の介護系企業として知られている。 同社では、短期間で拡大した組織を統括するためにグループウェアを導入したものの、肝心の介護サービスのマネジメントと、事業所間の人的な連携システムが不十分なままという課題が残されている。地域医療連携においては、とくに要介護高齢者を対象とした連携の場合、介護サービスの計画を地域の医療・介護機関が共有するケアマネジメントの仕組みが不可欠である。そこで、同社の連携体制が不十分であることの原因は、「ケアマネジメントの仕組みがないこと」であると考えられた。この点は、地域医療連携の根本的な推進要因が、電子カルテのようなITにあるのではなく、ケアマネジメントのような人手を介した仕組みにあることを示唆している。今後の研究で、この点をふまえた理論的モデルを構築したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでのところ、東日本大震災に対応する学内要員として尽力してきたこと、教育活動および学内用務に追われたことにより、進捗が遅れている。しかし、中国における「連携がうまくできていない事例」にアクセスできたことにより、理論的モデルの着想は得られた。今後の調査で遅れを挽回したい。
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Strategy for Future Research Activity |
国内事例のうち、まだ着手していない事例と中国の事例を綿密に調査して、理論的モデルの構築を実現させたい。一方、教育活動と学内用務が思いのほか多忙で、学内のしかるべき部局と相談しながらエフォートを調整し、完遂できるよう努力したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的に事例研究であるため、旅費に多くを費やす。とくに、24年度から中国の事例を対象としたため、同行する研究協力者兼通訳の分も含めて旅費・謝金等が発生する見込みである。また、同国の大学(たとえば、北京師範大学を想定)を訪問して現地での合同調査や意見交換をおこなう可能性もある。
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