2011 Fiscal Year Research-status Report
雇用形態多様化の生活習慣病への影響を検証するコホート研究
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23790580
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
井上 まり子 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 助教 (20508048)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 非正規雇用 / 雇用形態多様化 / 社会疫学 / 産業衛生 / 公衆衛生 |
Research Abstract |
本研究の目的は、雇用形態の違いが生活習慣病発症に及ぼす影響をコホート研究で検証することである。調査開始時の雇用形態と5年後の生活習慣病発症との因果関係を明らかにするため、次の2つの調査の準備と分析を行った。なお、雇用形態は正規雇用者を基準として、非正規雇用である契約・嘱託、パート・アルバイト、労働者派遣事業に伴う派遣社員との比較を行った。 平成23年度は当初の予定どおり(1)「労働者の健康調査」のデータ収集と(2)厚生労働省「中高年者縦断調査」の目的外利用(匿名データ利用)申請を行った。 (1)「労働者の健康調査」は職員数約1,500名の事業所のコホートを用いた研究である。既に平成19年度にベースライン調査を行っているため、5年後にあたる平成23年のデータ等を得た。このデータは雇用形態と共に年齢や生活習慣、Body Mass Index,血糖値、脂質代謝などの結果を有している。同コホートについて、雇用形態ごとの生活習慣病の発症ならびにリスク保有の評価を行うことができた。 (2)厚生労働省「中高年者縦断調査」の過去5年分の匿名データ利用申請を行った。同調査は平成17年度をベースラインとした追跡調査であり、雇用形態と共に職種や家族構成、所得、学歴、生活習慣等の情報を得られる。さらに各種疾病(心臓病、脳卒中、高血圧、高脂血症、悪性新生物、糖尿病)発症結果から、中高年者の雇用形態と生活習慣病発症の状態を把握できる。このデータの申請については厚生労働省の事前審査を通過し、平成24年4月に事前審査を終了した。平成24年7月までにはデータが送付される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた平成23年度のデータ収集は予定通り進んでいる。 (1)「労働者の健康調査」についてはデータ取得が進み、既にデータ整理と分析を行える段階にある。このうち基礎的分析結果は平成24年の日本産業衛生学会で口頭発表予定である。 (2)厚生労働省「中高年縦断調査」も事前審査に時間を要したものの、平成23年度末には事前審査が終了し、平成24年夏前には予定どおりデータを入手し、分析に取り組むことができる。 こうした研究の順調な進展とは別に、平成23年度には日本の社会状況の変化があった。東日本大震災後の社会や経済状態の変化があるため、労働者を取り巻く状態が不安定になっている。こうした社会背景を鑑み、より細かい労働状況を考慮して分析する必要性が出てきているため、平成24年度にはさらに発展して質問項目等を増やした追加調査を行うことを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.データ整理と分析 「労働者の健康調査」のデータ整理と分析をさらに進める。ベースライン時の雇用形態で正規・非正規雇用者に分類し、5年後の生活習慣病発症と検査の異常値保有について分析する。2.厚生労働省「中高年者縦断調査」の入手とデータ整理と分析を行う。追跡調査開始時の雇用形態で対象者を分類し、5年後の心臓病、脳卒中、高血圧、高脂血症、悪性新生物、糖尿病の発症について分析する。3.追加調査 日本の若年者と中高年者の就労と社会経済的環境についての追加調査をすべく、計画とプレテストを秋までに行う。実際の調査は秋以降の実施を計画している。調査対象となる機関での関係者への説明ならびに同意等を得るべく平成24年度当初から活動中である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は平成23年度からの研究費の繰越金が発生する。その理由は、研究計画は予定どおり進めているものの、予想していたほどの印刷費や会議費、旅費がかからなかったためである。この平成23年度からの繰越金(388,992円)と平成24年度請求額(1,200,000円)をあわせ、合計1,588,992円を使用する予定である。 この金額は当初の研究計画での使用目的である、平成23年度から進めているデータ分析についてまとめしだい英文での論文化や投稿を行うため、英文校正や投稿料での研究費使用を計画している。さらに次の追加調査の実施に用いる。 日本では平成23年の東日本大震災後の社会や経済状態の変化があり、労働者を取り巻く状態が不安定になっている。こうした社会背景から、より詳しい労働状態を考慮して分析する必要がでてきた。その詳しい分析のために、質問項目等を増やした追加調査を行うため、平成24年度の研究費は繰越金ならびに平成24年度請求額を調査の謝金、人件費、印刷費等に用いる予定である。
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