2012 Fiscal Year Research-status Report
雇用形態多様化の生活習慣病への影響を検証するコホート研究
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23790580
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
井上 まり子 帝京大学, 大学院公衆衛生学研究科, 講師 (20508048)
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Keywords | 非正規雇用 / 雇用形態 / コホート研究 / 健康の社会的決定要因 / 社会疫学 / 健康格差 / 不安定就労 / 産業衛生 |
Research Abstract |
本研究の目的は、雇用形態の違いが生活習慣病発症に及ぼす影響をコホート研究で検証することである。調査会指示の雇用形態と5年後の生活習慣病発症との因果関係を明らかにするために2つの調査を実施した。 平成24年度は予定どおり、(1)「労働者の健康調査」の分析と結果の公表、(2)厚生労働省「中高年者縦断調査」の目的外利用(匿名データ利用)申請の後に得た個票からコホート研究を行った。 (1)「労働者の健康調査」では職員数約1,500名の事業所のコホートを用いた分析を行った。雇用形態ごとの生活習慣病の発症とリスク保有評価を行った。とくにBody Mass Indexについては正規雇用者と比較して非正規雇用者での増加が統計的に有意に高いことを示し、日本産業衛生学会で報告した。 (2)「中高年者縦断調査」のデータ分析の結果から、雇用形態別の生活習慣病発症の違いをコホート研究から実証し、正規雇用と比較して男性の非正規雇用では4年後の高血圧発症に関連があるという内容をまとめた。この内容は平成25年度の日本産業衛生学会で発表予定であり、発表後に論文としてまとめて学術雑誌に投稿予定である。 さらに、研究申請当初の計画にはなかったが、平成24年度から宮城県石巻市において東日本大震災被災世帯における健康と生活状況調査に参加することになった。被災地における就労状況ならびに雇用形態別の健康状態と生活の違いについても比較検討する機会を得た。現地でのフィールド調査と連携先との打ち合わせ等と重ね、主に雇用形態別ならびに就業と失業別の健康・生活状態の違いについての研究のため、データ整備と分析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定どおり、平成23年度に個票を申請した厚生労働省の中高年者縦断調査からコホート研究を成立させ、データ分析の成果をあげることができた。 さらに、東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県石巻市において、被災地での雇用と生活の再建に関する調査にも参加することになり、現地とも連携した研究を実施しはじめることができた。石巻市での調査は当初の予定にはなかったが、日本における震災の影響の大きさと住民の生活再建の重要性を鑑みて開始した研究であり、こちらも平成24年度に行った調査データを入手して分析を進める段階に至っているため、研究は順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)「労働者の健康調査」に関しては、平成23年度に行った、事業所における健康調査については分析を引き続き行い、学術論文に投稿できるレベルにしていく。 (2)「厚生労働省の中高年者縦断調査のコホート研究」については、平成24年度の分析を進めて、高血圧のみならず糖尿病と循環器疾患というほかの生活習慣病についても解析を行う。結果は学会発表や学術論文への投稿を行う予定である。 (3)平成24年度に新たに開始した宮城県石巻市での住民の生活と健康調査における雇用の調査は、平成24年度の調査データを入手したうえで雇用形態別の健康度の比較を行い、学術論文を執筆できるようにする。 すべての研究の成果は学術誌での公表にとどまらず一般に広めることができるよう、プレスリリースや一般のシンポジウム等での情報の公開を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)「労働者の健康調査」、(2)厚生労働省「中高年者縦断調査」のコホート研究については、今後も分析を進め、得られた知見について執筆した論文については国際学術雑誌への投稿を予定している。そのため、主に英文校正に対する費用のために研究費を使用する。また、データと文献・資料の整理に関する研究補助者のための人件費が発生する予定である。 平成24年度に開始した宮城県石巻市についての研究では、平成25年度も引き続き現地フィールドでの調査のフォローや関係者との打ち合わせに関する費用が発生することが予想されており、主に旅費に費やす予定である。 すべての研究成果について一般向けに公開する場を設けるため、会場費や会議費に研究費を当てる計画である。 次年度に研究費を繰り越すことになったが、その主たる理由はデータクリーニングに関する研究補助のための人件費が当初予想していたほど必要ではなかったこと、2年目である平成24年度に学会発表の旅費や国際学術誌投稿のための英文校正代が計画ほどには発生しなかったことであった。これらの費用は平成25年度に持ち越される予定である。
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Research Products
(6 results)