2011 Fiscal Year Research-status Report
診療関連死発生時の医療者の対応意識に与える諸要因に関する研究
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23790582
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
中島 範宏 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10567514)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 診療関連死 / インシデント / アクシデント / 医療安全 / 届出制度 |
Research Abstract |
診療関連死の死因究明を行う「診療行為に関連した死亡の調査分析モデル事業」は2005年から開始され,現在は社団法人医療安全調査機構によって運営されている。先行研究によりモデル事業利用者の同事業に対する期待感および満足度は高いことが明らかとなっているが,同事業で取り扱った件数は当初の予想を下回っている。これは,医療機関で発生した事象を院外へ届け出るという意思の形成段階において,何らかの影響要因が存在する可能性を示唆している。 モデル事業は現時点では死亡事例のみを届出対象としているが,原則として医療安全の推進を目的とした事業である。多くの諸外国においても医療安全を目的とした報告制度として国家によるインシデント等の収集事業が整備されている。これらの国の医療安全に対する考え方,医療安全の要請に基づく届出への医療者の受容程度,医療安全目的の届出と刑事罰の関係について調査することはモデル事業創設時の原点に立ち返って議論を行う際に有用であると考えられる。そこで初年度は,診療関連死届出だけではなく,諸外国における国家レベルでのインシデント・アクシデント収集の実情についても文献調査を行った。主に最高裁判所図書館の蔵書について,複数のキーワード検索を行い,該当図書の内容の確認を行った。また,補足的な資料を得るためにWHOのHPへアクセスし,関連するレポートを探索した。この調査内容については学術誌への投稿を予定している。 次年度は各国の検死制度等について更に掘り下げて調査・考察を行い論文とする他,予定しているアンケート調査の結果を考察するための礎としたい。アンケート調査については統計処理関係のソフトを購入し,質問項目の作成などを行った。学内倫理審査委員会の審査を経て調査に着手する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では,初年度に文献調査,次年度にアンケート調査を行う予定となっていた。 次年度実施するアンケート調査の準備は初年度のうちに大部分を行う予定であったが,決して広いとはいえないキャンパス事情や震災にともない建物の使用用途が混乱している最中でもあったため,アンケート調査のために必要な作業部屋の確保に時間がかかった。そのため,アンケート調査の倫理審査手続以降のプロセスを次年度に持ち越すことにした。しかしながら,初年度のうちにアンケートの調査項目設定,説明書作成,倫理委員会セミナー受講,倫理審査申請書類作成の着手まで行っており,当初から時間的に無理のない計画にしていたこともあって,研究遂行への影響は生じていない。なお,作業部屋は無事に確保できたため,倫理審査を経たあとは円滑な調査への着手が可能である。 その一方で,文献調査については,アンケート準備に費やす予定であった時間を充てることができた。そのため,当初は診療関連死の届出に関する諸外国の実情のみを調査する予定であったが,インシデント等の国家レベルでの収集事業についても調べることができた。初年度のうちに幅広く資料検索ができたため,次年度はその結果をまとめることで新たな成果が得られると期待できる。 本研究の目的は(1)診療関連死発生時における各職種の対応意識に影響を与える要因、(2)診療関連死発生時の同一医療機関内における多職種間の関係性、(3)モデル事業依頼医療機関とそれ以外の医療機関における職場環境上の差、(4)海外における診療関連死届出を円滑に進める取り組みの状況、を明らかにすることである。(1)~(3)は次年度明らかにすべき内容であり,初年度の達成目標は(4)である。アンケート調査については若干遅れが生じたが,文献調査については当初の予定よりも充実しており,全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はアンケート調査をメインに研究を推進する。2012年5月には倫理審査の手続きに入り,7月の調査票配布を目指す。円滑に進行するように,必要に応じ謝金を支払って適切な人物からアンケートに係る作業への協力を得る。また,学会での発表や論文の執筆を積極的に行いたいと考えている。 文献調査の内容を整理するとともに,特に各国の検死制度の中で診療関連死がどのように扱われているのかについて明らかにする。必要に応じて文献を追加収集する。 本年度に行った文献調査の内容を精査し論文の質を上げること,およびアンケートの調査結果を国際誌に投稿するうえで建設的議論を行うことを目的とし,海外の研究者と密に連絡をとり頻繁にディスカッションを行うようにする。現在,特に英国の研究者と連絡を取り合っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費の大部分はアンケート調査のための費用である。また,アンケート調査を円滑に進めるために作業協力者への謝金も計上している。本年度は,図書代(書籍代)として10万円を計上していたが,最高裁図書館の文献を利用できたこと,および図書館へパソコンの持ち込みが可能であったことから,入手できる範囲内での文献調査に終始し,コピー代も特に使用せずに済ますことができた。しかし,次年度はアンケート調査の結果に対する考察を行うため,統計,法学,心理学など幅広い知識の補充が必要となるため,次年度も書籍代を計上している。また,英文論文を作成するために校正費,法医学会等の学会への参加費もあわせて計上している。
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Research Products
(2 results)