2011 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチに対する生物学的製剤を用いた治療戦略の医療経済評価研究
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23790585
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
森脇 健介 新潟医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 助教 (10514862)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国内研究 |
Research Abstract |
生物学的製剤を用いた関節リウマチに対する複数の治療戦略間での相対的な費用対効果を評価することを目的として、数理モデリングと臨床研究により収集する患者レベルのデータを組み合わせての医療経済評価を行う。研究計画に沿って平成23年度は研究基盤確立期として、(1)分析モデルの構築と(2)臨床研究の2つに取り組んだ。(1)分析モデルの構築:国内外の医療経済評価・臨床研究についての体系的な文献レビューを実施し、我が国の関節リウマチ医療を反映した分析モデルの構築を行った。これにより、関節リウマチ治療の医療経済評価を行うために必要となるQOL、臨床指標、費用に関する国内データの利用可能性を明らかにすることができた。分析モデルは、すでに公表されているブリガム関節リウマチモデルをベースに構築することを検討している。なお、我が国の疫学的特徴、医療制度を反映するよう、モデルのパラメータ推定値の利用可能性の検討を行い、不足データを臨床研究にて収集する準備を整えた。また、副次的なモデルとしてステロイド性骨粗鬆症モデルの構築を行い、各種統計データとの比較を通じてモデル妥当性の検証を完了し、基本モデルと組み合わせることでより精緻な医療経済評価の実施が可能となった。(2)臨床研究の推進:実地臨床における関節リウマチ患者の健康関連QOLと臨床指標との関連を明らかにする、また、医療資源の消費パターンの推定を行うことを目的とした臨床研究を立案し、協力施設の一部でデータ収集を開始した。実施に際してはプロトコルを作成し、倫理審査委員会の承認を得た上、倫理・安全面での十分な対策を講じた。対象は外来の関節リウマチ患者として、健康関連QOLや臨床指標、レセプトなどのデータ収集を行った。対象施設はこの他、新潟県内3病院を予定し、研究協力について既に内諾を得ており、順次、データの収集・解析を進めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、(1)分析モデルの構築、(2)臨床研究、(3)医療経済評価の実施、(4)情報価値分析の4つに大別される。研究基盤確立期にあたる平成23年度は、(1)分析モデルの構築と(2)臨床研究の2つに取り組み、おおむね計画通りに進展している。分析モデルの構築では、当初想定していた状態遷移モデルに加えて、離散イベントシミュレーションモデルと呼ばれる、実地臨床でのイベントをより精緻に記述・表現できる手法を援用することとした。これにともない予備的な分析を行うまでに当初の計画よりも若干多くの時間を要しているが、研究全体の計画には大きく影響しない。なお、文献レビューを通じてパラメータ推定値の利用可能性を検討したところ、分析に必要となるデータは前向き観察研究以外の方法から推定することが可能であったため、研究デザインを横断研究および後ろ向き研究に変更した。予定症例数は150例から400例に増加してデータ収集を開始しているが、前向き観察研究からの研究デザインの変更に伴いデータ収集のための労力は低減されるため、研究の進捗に遅延はない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究本格実施期にあたる平成24年度は、(1)臨床研究(継続)、(2)医療経済評価の実施の2つに取り組む。(1)臨床研究(継続):協力施設において順次データの収集・解析を行う。収集データの解析を通じて、関節リウマチの診療でよく用いられる指標であるHAQと効用値との変換式を構築することで、当該疾病分野における医療経済評価の興隆のためのリソースを提供することを目指す。また、収集データの解析により、モデル分析に必要となるパラメータ推定値を得る。なお、検出力不足のため、分析モデルのパラメータ推定に支障をきたす場合、症例の追加を行うまたはリサンプリング技術のひとつであるブートストラップ法を用いてパラメータの母集団分布を擬似的に形成することで対応を行う。(2) 医療経済評価の実施:構築された分析モデルと臨床研究データに基づいた医療経済評価を実施する。仮想コホートに対して各治療法を実施した場合の生涯にわたる費用とQALY(質調整生存年数)をシミュレーションにより推計する。各治療法間で増分費用効果比(ICER;1QALYよくするのにいくらかかるか)を算出し、関節リウマチに対する治療戦略間の相対的な費用対効果を年齢・性別・予後不良因子の有無別に検討する。なお、推定が困難なパラメータがある場合、複数の専門医の意見をもとにデルファイ法による合意形成を行って推定する。また、重要なパラメータについて感度分析を実施し、結果に及ぼす影響が大きいパラメータを同定する。なお、パラメータがもつ不確実性の影響を包括的に評価するために確率的感度分析を実施し、各治療方針がICERの社会的容認閾値を満たす確率を推定する。上記の取り組みを通じて、関節リウマチに対する治療戦略について社会経済の視点から提言を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究本格実施期にあたる平成24年度は、以下の通り研究費の使用を計画している。(金額単位:千円)(1)国内旅費~調査・研究発表旅費:200、研究打ち合わせ旅費:200(新潟県、兵庫県)(2)外国旅費~調査・研究発表旅費:800(米国、台湾、ドイツ)(3)謝金等~データ提供:150、英文校閲:200(4)その他~通信費:100、会議費:200
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