2012 Fiscal Year Research-status Report
関節リウマチに対する生物学的製剤を用いた治療戦略の医療経済評価研究
Project/Area Number |
23790585
|
Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
森脇 健介 新潟医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 講師 (10514862)
|
Keywords | 国内研究 |
Research Abstract |
本研究では、我が国における費用対効果の点から望ましい関節リウマチの治療戦略を明らかにすることを目的に、数理モデルと臨床研究データを組み合わせた医療経済評価を実施する。研究の本格実施期にあたる平成24年度は下記の2点を実施した。 (1)医療経済評価の実施:昨年度のレビューの結果、分析モデルの候補に挙がったThe Birmingham Rheumatoid Arthritis Model (BRAM)という離散イベントシミュレーションモデルをベースに、我が国の民族特性、医療制度を反映するようにパラメータを推定するべく、現在作業を進めている。また、サブモデルとしてステロイド性骨粗鬆症にともなう骨折モデルの構築を行い、各種統計データとの比較を通じてモデル妥当性の検証を完了し、ステロイド骨粗鬆症を有するリウマチ患者における骨折予防治療の費用対効果について探索的な医療経済評価を行い学会発表を終えている。 (2)臨床研究の推進:実地臨床における関節リウマチ患者の効用値と臨床指標(C-DAI, S-DAIなど)との関連を明らかにする、また、医療資源の消費パターンの推定を行うことを目的とした臨床研究を立案し、協力施設(新潟県立リウマチセンター、新潟県立中央病院)でデータ収集を行った。実施に際してはプロトコルを作成し、倫理審査委員会の承認を得た上、倫理・安全面での十分な対策を講じている。対象は外来の関節リウマチ患者として、i)効用値、HAQスコアなどの臨床指標、レセプトなどのデータ収集を行った。効用値の測定にはEQ-5D、SF-36を利用した。新潟県立リウマチセンターにて115症例、新潟県立中央病院にて27症例のデータ収集を完了した。臨床指標と効用値、あるいは医療費との関連の解析を完了し、国内外学会における発表にむけて準備を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の計画は、(1)分析モデルの構築、(2)臨床研究、(3)医療経済評価の実施、(4)情報価値分析の4つに大別される。研究本格実施期にあたる平成24年度は、主として(2)臨床研究、(3)医療経済評価の実施の2つに取り組み、おおむね計画通りに進展している。 臨床研究では、昨年度から横断調査に切り替え、症例数400例を予定していたが、現時点での解析の結果、モデルのパラメータ(効用値、費用)推定を目的とした多変量モデルの構築上、十分な症例数が集まったものと判断し、患者のデータ収集を終了した。効用値、費用、疾患活動性との関連について探索的な解析を完了しており、今後モデルへの組み込みを行う。 分析モデルの構築については、基本モデルの構築を完了している。上記、臨床研究の解析結果、文献推定値を組み込んだ上、医療経済評価の実施が可能となる。当初の計画よりもやや多くの時間を要しているが、全体の研究計画の進捗に支障のない範囲であると認識している。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究統括期にあたる平成25年度は、(1)医療経済評価の実施(継続)、(2)情報価値分析の2つに取り組む。 (1)医療経済評価の実施(継続):医療経済評価の基本分析を実施する。また、分析モデルのパラメータがもつ不確実性の影響を包括的に評価するために、1,000回の2次モンテカルロシミュレーションによるiii)確率的感度分析を実施する。すなわち、パラメータに設定された確率分布からのサンプリングを行いながらICERを1,000回計算し、ICERの確率分布を推定する。また、得られた1,000組の費用と効果のデータセットをもとに、費用効果受容曲線(CEAC)を導出し、ICERの確率的な評価を行う。これにより治療法のICERが1QALYあたりに社会が支払える閾値を満たす確率を推定する。 (2)情報価値分析(VOI):VOIはオペレーションズリサーチの手法を医療経済評価に応用したものであり、医療経済評価の結果がもつ不確実性を減じるために、今後追加的に必要となる情報の種類やそのデザインについて定量的な判断基準を示す方法である。なお、VOIは実際に英国NICEによる医療技術評価のガイダンスで今後必要となる研究を提言するにあたって活用されている。VOIでは確率的感度分析に基づき、モデル内のパラメータについて、完全情報の期待価値(EVPI)の算出を行う。各パラメータがもつ不確実性を金銭価値として定量化することにより、日本において今後追加的に必要となる臨床エビデンスの種類や優先度についての提言を行うことができる。 上記の取り組みを通じて、関節リウマチに対する治療戦略について社会経済の視点から提言を行う。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究統括期にあたる平成25年度は、以下の通り研究費の使用を計画している。(金額単位:千円) (1)国内旅費~調査・研究発表旅費:200、研究打ち合わせ旅費:90(新潟県、東京都) (2)外国旅費~調査・研究発表旅費:400(英国) (3)謝金等~データ提供:130、英文校閲:200 (4) 解析法に関する情報収集費:300
|
Research Products
(2 results)