2011 Fiscal Year Research-status Report
難病患者家族の社会的孤立に介入するウェブ交流モデルサイトの開発
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23790586
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
伊藤 純子 聖隷クリストファー大学, 看護学部, 助教 (10436959)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 難病患者家族 / ピアサポート / ウェブサイト / 相談機関 |
Research Abstract |
本研究の目的は、難病患者家族が抱える悩みや不安などの相談先に対するニーズを明らかにし、既存資源の問題点や不足しているサービスを整理することである。その上で、難病患者家族が利用しやすいWeb上の相談・交流サイトのあり方を検討し、試用サイトの構築を試みる。ニーズの把握は疾病により外出が困難な相談者が多い実態を考慮し、Webを中心に行う。現在、難病に関する相談機関の確保が施策として推進されているが、本研究では、インフォーマルな相談先としてインターネット上で一般に「Q&Aサイト」と言われる相談サイトの利用状況に注目した。 平成23年度は、我が国最大手サイトで検索した難病に関する質問と回答を対象に調査をした。質問内容と質問者の属性、投稿時期、回答の内容、良回答を得た回答内容と回答者の属性を分析した。投稿者の約6割は、患者本人ではなく家族であった。疾病の種類は潰瘍性大腸炎に関するものが多かった。また、時期としては症状が出現し、受診を検討している時期が最も多く、代表的な相談の内容は「受診先や受診のタイミング」「就労・経済的問題」「家族関係」であった。治療・療養に関する質問の順位は低かった。回答者の属性は患者・家族を含む当事者が最も多かった。 良回答においては自身の体験に基づく情報提供や情緒的支援が行われていることが明らかになった。専門医により難病(特定疾患)と確定診断されるまでには時間を要し、不安や動揺により混乱が生じる時期においてピアサポートが機能していることが示唆された。また、患者家族は回答者としても積極的に参加している。外出困難であってもインターネットを介した社会貢献は自己実現のニーズを充足し、相互に利益がある点で意義深い。 一方で、一部回答には信頼性に疑問のある情報の不適切な引用も見られた。当事者同士がweb上で安心してサポート関係を醸成できる安全な場の構築が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において研究計画と示したスケジュールにおいて、平成23年度に遂行すべき課題とした項目は、(1)既存期間の相談実態及び既知のニーズの整理、(2)インターネット上の相談の実態把握、である。充分な文献検討の後、前述の通り(2)に関する研究成果を納めた。従って、研究計画は概ね順調に遂行していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画は順調に遂行されている。24年度計画に従い、難病患者家族の交流サイトの準備を進める方針である。それに加え、これまでの調査結果を踏まえ、サイトの有用性を高めるために、難病患者家族がインフォーマルなサイトに相談を投稿する背景をより明確にすることが望ましいと考えている。期間、また予算上の制約から小規模調査とならざるを得ないが、インターネットを利用したアンケート調査を実施し、ニーズの把握を補足することで成果の精度を高めたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度はデータ分析作業依頼に関する人件費を計上していたが、行程を再度見直し研究者自身による作業量を増やしたこと、またボランティアによる経費節減により繰り越し金が発生した。平成24年度は実際のサイトの運用をめざしている。管理及び利用状況分析等の作業が必要となるが、当初計画よりも作業時間を必要とすることが見込まれるため、計画を修正し23年度繰り越し分は特に24年度の人件費に充当して予算を執行する計画である。
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