2012 Fiscal Year Research-status Report
ハイドロダイナミック遺伝子導入法による非ヒト霊長類への遺伝子治療
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23790595
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
上村 顕也 新潟大学, 医歯学総合病院, 医員 (00579146)
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Keywords | 遺伝子治療 / ハイドロダイナミック遺伝子導入法 / 肝臓 / 非ウイルスベクター / 前臨床研究 / 血管造影手技 / 血友病 / 大動物 |
Research Abstract |
本研究は、ハイドロダイナミック法(HGD)を用いた遺伝子治療法を構築するため、非ヒト霊長類を対象動物として安全性、有効性を検証することを目的としている。平成24年度の本研究助成基金助成金によって、以下の研究成果が得られた。 1.非ヒト霊長類の肝臓に対する長期遺伝子治療効果の検証:我々は平成23年度の研究により、体重20 kgのヒヒにHGDを安全かつ効率的に応用できることを報告した。最適な遺伝子注入パラメーター下でヒト凝固因子IX番発現プラスミド(pBS-hFIX)をヒヒ4頭を対象動物として、血管造影手技により右外、右内、左内、左外側肝静脈に遺伝子注入用バルーンカテーテルを用いて、遺伝子導入した。導入効率を血漿中hFIX濃度、hFIX凝固活性で評価した。全4頭において、注入後14日で血漿hFIX濃度は10^4 ng/mlに、凝固活性は40-50%に上昇し、血友病に対する治療域を3-4ヶ月維持した。明らかな副作用を認めず、動物の成長にも異常を認めなかった。 2.ヒト遺伝子治療への応用を目指した遺伝子注入器の開発:前臨床研究に使用可能なコンピューター制御の遺伝子注入器を医工連携により開発した。我々はこれまでに、HGDの効率と再現性が注入時の対象領域内圧―時間曲線に密接に関連することを確認した。そこで本学産学地域連携推進機構、工学博士、尾田雅文教授の協力を得て、同曲線を再現するフィードバックシステムを組み込んだ電動モーター式注入機を開発した。ラットを対象動物としてその有効性、遺伝子導入効果の再現性を実証し、誰にも再現できる遺伝子導入の実現の可能性が示唆され、論文として報告した。 以上から、HGDが非ヒト霊長類において長期遺伝子治療効果を達成すること、新規遺伝子導入システムが、臨床研究に向けて有用であることが示唆された。この成果は安全で再現性のある遺伝子治療法を構築するための基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 平成23年度の研究結果により最適化された遺伝子注入パラメーターのもとで、平成24年度に非ヒト霊長類において、長期遺伝子治療効果が実証され、研究が論理的、効率的に進展した。 2. 遺伝子治療の再現性を担保する遺伝子導入システムの開発が開始され、来年度の研究に向けた基盤が確立された。 3. 遺伝子注入器の改良、開発について研究協力者の尾田教授と医工連携が密接になされ、将来的な日本の新たな医療技術の開発に結びつく研究が実施された。 4. 動物管理、施設の使用、サンプルの管理など、ピッツバーグ大学薬学部、ジョージア大学薬学部との連携が円滑に行われ、かつ研究の客観的な評価が慎重に重ねられた。 5. 研究協力者である、Liu教授より、研究の方向性について、適切なアドバイスを得ることが可能であった。 以上の点から、現時点で本研究が順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 非ヒト霊長類に対するハイドロダイナミック遺伝子導入法(HGD)の再治療効果の検証 HGDにおいてはDNAプラスミドそのものを導入するため、ウイルスベクターによる遺伝子導入に比較して、免疫応答などの危険性が低く、生物学的な安全性が高いことが利点である。平成24年度にヒト凝固遺伝子IX番発現遺伝子を導入したヒヒ4頭にhFIX濃度、凝固活性が前値に低下した時点で、同パラメーターで再治療を行い、遺伝子導入効率を検証する。また、免疫反応を含めた、血液生化学、生理学的な検証による安全性の検討を行う。 本研究の結果からHGDの再治療効果を大動物で初めて実証することができる。 2. 臨床研究に向けたハイドロダイナミック遺伝子導入システムの確立 平成24年度に開発し、小動物において、遺伝子導入の効率、再現性、安全性を検証した新規遺伝子導入システムを医工連携により、ハード、ソフト面で大動物に使用可能なモデルに変更する。 本研究の成果により、個体や対象臓器による遺伝子導入効率の差異を減じ、「誰もが、どのような患者さんにも」再現できる安全な遺伝子治療システムの確立が可能となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は遺伝子導入効率を検証するためのELISA、免疫染色等の試薬費、再治療に伴う免疫反応等の安全性評価のための血液生化学検査の費用を中心として本研究基金による助成を使用する計画である。
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Research Products
(7 results)