2011 Fiscal Year Research-status Report
宿主ゲノムへの挿入がない単一造血系遺伝病に対する安全な遺伝子治療法の開発
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23790602
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉田 久美 九州大学, 薬学研究科(研究院), 客員助教 (80553271)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 遺伝子治療 / 単一遺伝子欠損症 |
Research Abstract |
これまで、GFP遺伝子搭載rSeVにて遺伝子導入された移植骨髄より全血球系の再構築がなされることを報告しているが、半永久的な遺伝子導入蛋白の発現を維持するまでには至っていない。そこで、 特に、rSeVの造血幹細胞の生体内での自己複製能に与える影響と関連して、体内での活性酸素種・Ca2+ の動態を調べることで、遺伝子欠失型疾患への遺伝子補充療法への突破口を探索している。当該年度においては、(1)rSeVの造血幹細胞(HSCs)に対する影響を調べる為、CaR、CXCR4、Tie-2、N-cadherin骨髄のnicheへの定着維持に必要と言われている種々の細胞表面蛋白群)の発現変化を検討したが、特に大きな変化は見られなかった。また、(2)rSeVにて遺伝子導入された骨髄細胞移植マウス血中のCa2+濃度、Caと関わって反応のあるホルモン分泌(PTH等)について検討したところ、血清中のCa2+濃度が一過性に低下し、その時期に合わせてCa2+と関連して変化のみられるホルモンであるPTHの上昇がみられた。(3)rSeVにて遺伝子導入された骨髄移植マウスにおいて、抗酸化剤を投与した場合血中の遺伝子発現の期間の変化を検討したところ血球系細胞において導入遺伝子発現の延長がみられた。しかし、その発現は移植後徐々に低下し、遺伝子発現の半永久的維持には至らなかった。これらのことは、rSeVにて導入した遺伝子の半永久的発現の維持においてCa2+及び活性酸素種が少なからず関係していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
導入したレポーター遺伝子に依存した現象でないことの証明を目的とした、レポーター遺伝子(GFP)の影響を排除するために、IL-2Rγ欠損NOD/SCIDマウスにて、rSeVにてIL-2Rγ遺伝子導入した自家骨髄移植の系で、半永久的遺伝子発現の維持が可能であるかの評価に関して、マウスの成育不良のため検討が若干遅れているものの、rSeV遺伝子導入骨髄移植マウスにおける活性酸素種及びCa2+変化に関する結果は概ね得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究課題の推進に関しては、概ね順調であるが、動物実験を用いた検討、特にトランスジェニックマウスの作製に留意する必要がある。その作製のため、必要な技術習得を準備推進している。また、これまでの結果をふまえ、rSeVを用いた遺伝子導入骨髄移植によいて、半永久的な遺伝子導入蛋白の発現を維持する方法を開発する。特に関係が示唆された複数の原因を取り除く方法を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
rSeV-GFPを用いた遺伝子導入ES細胞の受精卵へ挿入によるトランスジェニックマウス作成のため、細胞培養及びマウス育成費用として使用する予定である。 また、昨年度に引き続きIL-2Rγ欠損NOD/SCIDマウスへの、rSeVにてIL-2Rγ遺伝子導入した自家骨髄移植の系における、細胞表面解析用FACS抗体及び試薬、IL-2Rγと関連したサイトカイン(IL-2,4,7,9,15,21)評価用のELISAkit等費用として使用する。また、発展する分野の様々な新しい知見と技術等習得のため、国内外の学会等へ出席するために経費を使用の予定である。
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