2012 Fiscal Year Research-status Report
ナドロールを用いた薬物トランスポーターを介する薬物相互作用のインビボ評価法の確立
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23790605
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
三坂 眞元 福島県立医科大学, 医学部, 助教 (10583635)
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Keywords | 薬物トランスポーター / 薬物相互作用 / 活性指標薬 / 薬物動態 / ナドロール / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本研究はアドレナリンβ受容体遮断薬であるナドロールを薬物トランスポーターのインビボ活性指標薬として確立することを目指すものであり、すなわちナドロールと種々の薬物トランスポーター阻害薬または誘導薬との相互作用を検討し、薬物トランスポーターの活性変動に起因する薬物相互作用のナドロールを用いた新たな評価法を構築することである。 これまでの研究より、P-糖タンパク質(P-gp)の阻害薬であるイトラコナゾールは、ラットおよびヒトにおいてナドロールの最高血漿中濃度(Cmax)および血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)を有意に増加することを明らかにした。また、P-gpの誘導薬として、ラットではデキサメタゾン、ヒトではリファンピシンを併用した場合、ナドロールのCmaxおよびAUCはコントロールと比べ僅かに低下した。次に有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)の阻害薬としてラットでは、ナリンギン、ヒトではグレープフルーツジュースをナドロールと共に投与したところ、ナドロールのCmaxおよびAUCはわずかに低下したが対照群との間に統計学的に有意な差異は認められなかった。さらに、緑茶および緑茶カテキンとナドロールとの相互作用を検討したところ、ラットおよびヒトにおいて緑茶はナドロールのCmaxおよびAUCを顕著に減少させるという興味深い結果が得られた。現在、緑茶とナドロールとの相互作用の詳細なメカニズムを調べているところである。 以上より、ナドロールの体内動態はP-gpによって制御されること、緑茶の飲用はナドロールの血中濃度を著しく低下させること、その一方でグレープフルーツジュースはナドロールと薬物相互作用を起こしにくいことが基礎および臨床において示唆された。 今後は上記相互作用の機序解明および研究成果の発表に傾注していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画のうち、主要な課題であった「薬物トランスポーターの関与が示唆される医薬品や食品との相互作用評価への応用」に関しては、緑茶および緑茶カテキンに焦点を当て、ナドロールを薬物トランスポーター活性指標薬として緑茶または緑茶抽出物との相互作用試験を実施した。その結果、基礎実験および臨床試験のいずれにおいても緑茶または緑茶抽出物はナドロールの血中濃度が著しく変動することが明らかとなった。詳細な相互作用のメカニズムは現在解明を進めているところであるが、本知見はこれまでに知られていなかった新たな食品-医薬品相互作用の可能性を示唆するものであり、今後さらなる研究が求められるものの、より最適な薬物治療を指向する上で臨床的意義を有すると考える。同時に本研究成果は薬物トランスポーターを介する薬物相互作用を基礎および臨床において評価する上でナドロールが有用な指標薬となりうることを支持するものであり、本研究課題の主な目的の一つを達成しつつあると考える。また昨年度の研究課題であった「ラットおよび健常人におけるナドロールと薬物トランスポーター阻害または誘導剤との相互作用」に関しては研究成果を2報の学術論文として発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
緑茶とナドロールの相互作用実験については、基礎実験および臨床試験それぞれについて論文化を進めている。現在進行中のヒト薬物トランスポーターを発現させた細胞系を用いたin vitro におけるナドロールの輸送実験は成果を上げつつあり、今後は学会発表および論文公表など研究成果の発表に注力する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は主に研究成果の発表を目的として助成金を使用する予定である。
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