2012 Fiscal Year Annual Research Report
エズリンによる胎盤機能維持分子機構と胎児発育不全予防の新戦略
Project/Area Number |
23790606
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
巨勢 典子 慶應義塾大学, 薬学部, 研究員 (60348612)
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Keywords | 血液胎盤関門 / 胎児成長 / エズリン / ヒポタウリン / トランスポーター |
Research Abstract |
胎盤組織におけるSlc6a13の局在を明らかにするため免疫染色解析を行った結果、Slc6a13由来のシグナルは絨毛性栄養膜細胞層に局在することを明らかにした。血液胎盤関門モデル細胞株であるTR-TBT18d-1の細胞内にはヒポタウリンが高濃度に存在し、主に細胞外からの取込み輸送により濃度が維持されていることが示された。したがって、胎児胎盤系におけるヒポタウリンの供給機構として、母体血からの細胞膜輸送による直接的供給が重要であることが示唆された。他のSlc6aトランスポーターがヒポタウリン輸送に関与する可能性について検討した結果、Slc6a6についてもヒポタウリンを基質とすることを明らかとした。ただし、親和性と血中濃度の観点からヒポタウリン輸送への寄与は小さいことが示唆された。 エズリンがSlc6a13を機能的に促進することを解明するため、HEK293細胞を用い、エズリンおよびSlc6a13の遺伝子を共発現させることを試みた。[3H]GABA を用いたSlc6a13の輸送活性はエズリンとの共発現により上昇した。しかし、HEK293細胞では内因性エズリンの発現量が高いため、エズリンとSlc6a13との共発現の効果は過小評価されていると考えられ、実験条件を改善したのちに追加解析が必要であると示唆された。 胎児成長遅延を呈するエズリンノックアウトマウスに対して、妊娠初期より持続的にヒポタウリンを投与することにより、胎児胎盤系へのヒポタウリン供給および胎児発育不全回避を試みたところ、胎盤中ヒポタウリン濃度は上昇し、胎児中ヒポタウリン濃度は上昇しなかった。また胎児成長遅延も改善されないことがわかった。この原因はSlc6a13が低濃度にて飽和することと考えられるため、胎児胎盤系のヒポタウリン欠乏に対し、ヒポタウリンの前駆体あるいは代替物の供給による活性の補填が重要であると推察された。
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