2011 Fiscal Year Research-status Report
心腎・脳腎連関を考慮した慢性腎臓病治療におけるエリスロポイエチンの有用性の検討
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23790608
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
鳥羽 裕恵 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (90351270)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 臨床薬理学 / 心腎連関 |
Research Abstract |
部分腎摘術により1/2腎摘、3/4腎摘、5/6腎摘、17/18腎摘術を行った。1/2腎摘、3/4腎摘ラットではノーマルラットと尿たんぱく、クレアチニンクリアランスに有意差はなかったが、5/6腎摘、17/18腎摘ラットでは腎摘の程度に相関して尿たんぱく、クレアチニンクリアランスの悪化とヘマトクリット値の低下が認められた。一方、血圧は全群間に有意差は認められなかった。また、5/6腎摘、17/18腎摘ラットでは大動脈における内皮機能の低下とスーパーオキサイド産生の増加、VCAM-1やオステオポンチン、マクロファージの浸潤などの炎症反応の亢進が認められたが(Toba H et al., Eur J Pharmacol. 2012; in press)、これらは5/6腎摘群より17/18腎摘群でより強く認められた。また、腎機能の悪化に相関して、内因性NO合成酵素阻害物質であるADMAの血中濃度が上昇していた。 さらに、Erythropoietinの血管保護効果について検討するためによりシビアな腎障害を引き起こすために、5/6腎摘ラットに食塩を負荷し、高血圧合併5/6腎摘ラットを作成した(高血圧CKDラット)。Erythropoietinは高血圧CKDラットの尿たんぱくとクレアチニンクリアランスの悪化を軽減した。また、erythropoietinは大動脈におけるマクロファージ浸潤と肥厚、内皮機能低下を改善した。またerythropoietin投与群でリン酸化Akt発現増大が確認された(Toba H et al., Eur J Pharmacol. 2011; 10;656(1-3):81 )。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は1)心腎連関・脳腎連関の原因物質の特定、と2)CKD動物の脳・血管障害に対するEPOの効果の検討、であったが、腎摘ラットを用いた検討において、腎障害と相関した大動脈障害を確認したと同時に、血中ADMAの上昇もそれらに相関していたことが明らかになった。ADMAは心腎連関に重要な役割を果たしている可能性が示唆されている物質の一つであり、今回の検討において、腎障害、血管障害との相関がみられたことから、まだ脳の障害についての検討は不十分であるが、心腎連関の機序の一つにADMAの関与が示唆することができた。また、erythropoietinによる高血圧CKDラットの腎・血管保護効果を明らかにすることができ、また、その効果がヘマトクリットを上昇させた150U/kg(週3回、s.c.)を投与した場合だけではなく、ヘマトクリット値に影響を与えない75U/kgを投与した群でも同様の効果が発揮されたため、造血を介さない血管保護効果を証明することができた。またL-argininにより血漿NOx値をerythropoietin投与群と同程度に回復させた群では、erythropoietin投与群と類似の血管保護効果が発揮されたことから、erythropoietinの血管保護作用はPI3K/Akt経路を介したNO産生増大を介して発揮されることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通りの研究を予定している。具体的には、心腎連関の機序と示唆されたADMAを培養血管内皮細胞に負荷し、細胞障害が発症する機序を明らかにする。また、ADMA以外にも心腎連関、脳腎連関の機序として関与している因子について、さらに部分腎摘ラットを用いて検討を行う。また、erythropoietinのCKDラットにおける腎保護、大動脈保護機序についても検討を行う。初年度にPI3K/Akt経路を介したNO産生が血管保護効果の機序として示唆されたが、NO産生以外の機序について、特に抗酸化作用を中心に検討を行う予定である。具体的にはerythropoietinによる抗酸化酵素の発現への影響を検討する。また、PI3K/Akt経路との関与を検討する。さらにsuperoxideの産生源と報告されているNADPH oxidase活性への影響についても検討を行う。また、NO合成酵素阻害剤を併用した際のerythropoietinの効果についても検討を行い、NO産生以外のerythropoietinの血管保護機序について詳細に検討を行う。同様の検討を腎組織においても行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に光学顕微鏡を購入済みのため、次年度は画像解析ソフトに加え、あとはラットやerythropoietin、L-NAMEなどの投与試薬、腎機能のアッセイに用いるキット、抗体など、すべて消耗品に使用する予定である。また、初年度の成果を発表する国際学会の参加費に一部使用する予定である。直接経費1,100,000円の内訳として、ラット400,000円、試薬300,000円、抗体300,000円、学会参加費50,000円、画像解析ソフト50,000円とする計画である。
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[Journal Article] Recombinant human erythropoietin ameliorated endothelial dysfunction and macrophage infiltration by increasing nitric oxide in hypertensive 5/6 nephrectomized rat aorta.2011
Author(s)
Toba H, Morishita M, Tojo C, Nakano A, Oshima Y, Kojima Y, Yoshida M, Nakashima K, Wang J, Kobara M, Nakata T.
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Journal Title
Eur J Pharmacol.
Volume: 656
Pages: 81-87
Peer Reviewed
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