2011 Fiscal Year Research-status Report
間質性膀胱炎における痛みの発現メカニズムの解析:サブスタンスPと硫化水素の役割
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23790609
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
坪田 真帆 近畿大学, 薬学部, 助手 (90510123)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 膀胱痛 / 膀胱炎症 / サブスタンスP / Cav3.2 / 硫化水素 |
Research Abstract |
本年度はサブスタンスP(SP)誘起膀胱炎モデルおよび本モデルを用いた痛み評価系を確立し、本モデルにおける各種阻害薬の効果の検討を中心に行った。1)SP誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系の確立:マウスにサブスタンスP(SP)を膀胱内投与することにより実験的膀胱炎モデルを作製し、von Frey filamentにより本モデルマウスの膀胱周囲皮膚表面および後肢足底を刺激することで関連痛覚過敏が認められることを証明した。炎症に関しては、膀胱相対湿重量の増加に加え、病理組織学的に僅かな好中球浸潤が認められることを明らかにした。2)SP誘起膀胱炎モデルにおける関連痛覚過敏および炎症症状へのH2S-T型Ca2+チャネル系の関与の検討:上記膀胱炎モデルにおいて、H2S合成酵素の1つであるシスタチオニン-γ-リアーゼ(CSE)の阻害薬であるDL-propargylglycine (PPG)が 膀胱湿重量の増加および関連痛覚過敏の発現を抑制することを証明し、さらに、T型Ca2+チャネル阻害薬であるNNC 55-0396およびアンチセンス法によるCav3.2 T型Ca2+チャネルのノックダウンによりSP誘起関連痛覚過敏の発現が阻止されるとの知見も得られた。3)SP誘起膀胱炎モデルのCSEタンパク発現量の測定: Western blot法によりSP誘起膀胱炎モデルマウスの膀胱組織中でCSEのタンパク発現量が増加していることを確認した。4)LPS誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系の確立:現在、SP誘起膀胱炎モデルに加え、リポポリサッカライド(LPS)を膀胱内投与することにより実験的膀胱炎モデルを作製し、本モデルにおいても膀胱周囲皮膚表面および後肢足底における関連痛覚過敏が認められるかについて検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度、マウスへのSP膀胱内投与により膀胱組織中でH2S合成酵素の1つであるシスタチオニン-γ-リアーゼ(CSE)のタンパク発現量増加が認められ、CSEの阻害薬であるDL-propargylglycine (PPG)が SP誘起膀胱湿重量の増加および関連痛覚過敏の発現を抑制し、さらにH2Sの標的分子であるCav3.2 T型Ca2+チャネルのノックダウンにより関連痛覚過敏が阻止されたことから、膀胱痛発現におけるSP-H2S系の関与が強く示唆された。以上のことから、本年度は当初の計画予定通りに研究を進行できたと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見に加え、さらに詳細な検討を行う。また、SP誘起膀胱炎モデルに加え、新たにLPS誘起膀胱炎モデルの作製を試み、本モデルとSP誘起膀胱炎モデルとの違いを比較検討していきたい。1)シクロホスファミドおよびSP誘起膀胱炎モデルでのCSEタンパク発現量増加におけるメカニズムの解明:現在、シクロホスファミドおよびSP誘起膀胱炎モデルマウスの膀胱組織中においてCSEタンパク発現量増加が認められているが、このメカニズムについては未解明である。転写因子NF-kBは、CSEタンパク発現量増加に関与することが報告されていることから、両膀胱炎モデルにおけるNF-kBの関与について検討を行う。実際の検討は、NF-kB阻害薬として知られるcurcuminを用いて、膀胱炎症状および関連痛覚過敏が抑制されるかについて行動薬理学的に検討を行い、さらにWestern blot法を用いてcurcuminが両モデルにおけるCSEタンパク発現量増加を抑制するかについて明らかにする。2)LPS誘起膀胱炎モデルの作製と痛み・炎症の評価系の確立: LPSを膀胱内投与することにより実験的膀胱炎モデルを作製し、本モデルにおいても膀胱周囲皮膚表面および後肢足底における関連痛覚過敏が認められるかについて検討を行う。3)LPS誘起膀胱炎モデルにおける関連痛覚過敏および炎症症状へのH2S-T型Ca2+チャネル系の検討:上記膀胱炎モデルにおいて、H2S合成酵素CSEの阻害薬であるDL-propargylglycine (PPG)が、膀胱湿重量の増加および関連痛覚過敏の発現を抑制するかを明らかにし、さらに、T型Ca2+チャネル阻害薬であるNNC 55-0396およびアンチセンス法によるCav3.2 T型Ca2+チャネルのノックダウンによりLPS誘起関連痛覚過敏が阻止されるかについて検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
薬学教育が6年制へ移行したことより、4年時のCBT、OSCE、5年時の実務実習等のカリキュラムが増え、研究室内の学生の人数が一年の間で大きく変動することとなった。特に、2011年12月から2012年3月の間は、研究室内の学生数が少なく、実験を進行できなかったため、本年度の予算を次年度へ繰り越さなければならなかった。もっとも学生数が多く、研究を進めていける時期としては4から6月であると思われ、この時期に繰越金額を使用する予定である。次年度予算については7月以降に使用を開始し、12月までの間に支出を行なっていく計画である。
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