2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23790611
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
杉山 永見子 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 研究員 (40574695)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 反応性代謝物 / 副作用 |
Research Abstract |
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、重篤な皮膚障害の一種であり、発症率は非常に低いが、致死率が比較的高く、予後が悪い。この発症の一因は薬の副作用であり、免疫反応が関わっているとされるが、詳細なメカニズムは未だに不明な部分が多い。本研究では、本副作用を発現しやすいアロプリノールを主対象医薬品としてSJS/TENの初期メカニズムを明らかにすることを目的としている。 平成23年度は、医薬品が代謝活性化を受けて蛋白質と共有結合するかどうかを明らかにするため、ヒト肝組織由来試料を用いて、重症薬疹を発現しやすいとされ標識体が比較的安価である14C標識フェニトインを対象に、反応性代物と生体内蛋白質との共有結合体(アダクト)生成の条件検討を行った。 14C標識フェニトインを肝組織由来試料であるS9、サイトゾルおよびミクロソーム画分と反応させた。蛋白を抽出し、SDS-PAGEを行い、ゲルをPVDFメンブランに転写後、放射性同位体検出用スクリーンに露光し、フェニトインアダクト蛋白のバンドの有無を確認した。その結果、NADPH添加条件下でミクロソームのみを用いて反応させた沈殿画分から得られた抽出蛋白で、バンドが検出された。このバンドは、14C-フェニトインが結合したと推定されるアダクト蛋白質と考えられる。一方、S9およびサイトゾルをミクロソームに加えて反応させた沈殿画分では、20日露光後もバンドは検出されなかった。S9およびサイトゾルにはグルタチオン等の反応性代謝物除去関連因子が含まれており、この影響によるものと考えられる。今後、二次元電気泳動を行い、アダクト蛋白のスポットを切り出し、質量分析により同定する予定である。また、これらの条件検討結果を踏まえて、14C標識アロプリノールを用いて反応を行い、得られたアダクト蛋白について同定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、主対象医薬品としてアロプリノールを使用するが、アロプリノールの14C標識体は、合成依頼品で量的な余裕がないため、アダクト生成の条件検討を、市販されており、安価なフェニトインの14C標識体を使用して行った。 フェニトイン14C標識体を肝組織と反応させ、得られた抽出蛋白を用いてSDS-PAGEを行いゲルをPVDFメンブランに転写後、放射性同位体検出用スクリーンに露光し、フェニトインアダクト蛋白のバンドの有無を確認した。この中で、放射性同位体検出用スクリーンに露光する際、アダクト蛋白の生成が少なく、シグナルが弱いと20日間以上の露光が必要となる。条件検討の1,2回目の実験では、アダクト蛋白の生成がほとんど見られず、露光を20日間行ってもバンドが検出されなかったが、露光には時間がかかってしまった。また、ミクロソームと反応させて得られた抽出蛋白では、4日間の露光でバンドが確認できたが、予想よりもアダクト生成が少なく、二次元電気泳動を行い、スポットの確認をするためには、20日以上露光が必要である。また、初代培養肝細胞を用いた実験も行い、細胞内グルタチオンレベルを低下させた条件で、薄いながらバンドが認められた。以上のことから、平成23年度は、フェニトインのアダクト蛋白のバンドを確認することで終了した。次年度は、フェニトイン標識体を用いた実験を踏まえて、アロプリノール標識体の実験を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
14C標識フェニトインを用いた実験では、ヒト肝ミクロソーム、およびヒト初代培養肝細胞を用いて反応させたサンプルでフェニトインアダクト蛋白と予想されるバンドが検出されており、今後、二次元電気泳動、スポットの切り出し、質量分析による同定を進める。 フェニトインを用いた実験を踏まえ、14C標識アロプリノールでのヒト肝組織由来試料を用いたアダクト生成反応条件を構築する。露光に時間がかかるため、条件検討は、できるだけ同時進行で行う。アロプリノールを代謝活性化する酵素はキサンチンオキシダーゼと推定されるため、14C標識したアロプリノールをグルタチオン低下剤と共に肝細胞処理し、得られた抽出蛋白を二次元電気泳動で分離し、質量分析により、アロプリノールアダクト蛋白を同定する。さらに予定通り、同定した蛋白アダクトの分解による、アロプリノール結合抗原ペプチドの生成、生成したアロプリノール結合ペプチドの小胞体内への取り込み、アロプリノール結合抗原ペプチドのHLA-B*5801への結合と細胞表面への提示に関する研究を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題は、実験の進行がやや遅れており、次年度に使用する予定の研究費が生じた。平成24年度は、肝ミクロソーム、ヒト肝細胞、二次元電気泳動用(プレキャストゲルや泳動用バッファーなど)、質量分析用(カラムや溶媒など)、細胞培養用(培地、フラスコなど)、組換えDNA実験用、放射活性測定用の試薬・器具の消耗品購入や国内学会参加のための旅費に使用する予定である。
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