2011 Fiscal Year Research-status Report
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23790631
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
桧貝 孝慈 東邦大学, 薬学部, 准教授 (70297711)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞傷害 / 多糖類 / KLRs / NCRs / 糖鎖リガンド |
Research Abstract |
本研究では、KLRsやNCRsなどのレクチン-糖鎖の結合活性が、細胞レベルにおいてどのように機能するのか、NK細胞に対する多糖類による免疫機能活性化の制御メカニズムを明らかにすべく研究を遂行した。I. 過硫酸化糖鎖および部位特異的脱硫酸化糖鎖の作製と多糖類によるNK細胞活性化の解析 Heparinの部位特異的脱硫酸化体およびChondroichin sulfate-B(CS-B)を化学的に硫酸化し、KLRsやNCRに対する結合をEIAにより解析した。その結果、NKG2DはCS-Bに結合しなかったが、過硫酸化CS-Bに対して強い結合を見出すことができた。しかしながら、部位特異的脱硫酸化Heparinや過硫酸化CS-BによるNK細胞の細胞増殖とLamp-1発現に変化は認められなかったことから、Ca流入を介した細胞内イベントには関与しないものと思われるが、fucoidanによる前処理によりわずかではあるが細胞傷害活性の上昇が見出されたことから、NK受容体を介したシグナル伝達が起こっている可能性が示唆された。 II. NK活性化受容体リガンドや抑制性受容体リガンドおよび糖鎖改変モデル細胞の作製 平成24年度において、多糖類ならびにIL-2処理NK細胞による細傷害活性を解析するにあたり、その標的細胞の樹立を行った。K562細胞に対して、細胞表面のheparan sulfateを分解するHsulf-1、alpha2,3-シアル酸を減少させるhST6GalI、N結合型高分岐鎖を低下させるGnT3およびNKG2Dのタンパク性リガンドであるMICA, ULBPsの高発現株を作成した。樹立した高発現株の遺伝子発現をRT-PCR、および細胞表面糖鎖をフローサイトメトリーにて確認を行った。これらの細胞に対する細胞傷害と多糖類の影響を平成24年度に解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画に対する達成度はおおむね順調に進展している。I)過硫酸化糖鎖および部位特異的脱硫酸化糖鎖の作製に関しては、作製も完了した。細胞傷害の増強を示す過硫酸化GAGsや部位特異的脱硫酸化GAGsを見出すことはできなかったが、fucoidanの前処理によりわずかではあるが細胞傷害活性の上昇を見出すことができた。さらに、perforinやgranzymeの放出といったイベントには関与しないことが明らかとなったことから、引き続きリン酸化シグナルの増強を解析している。II)KLRs糖鎖リガンドによるNK細胞活性化の解析は、細胞増殖およびLamp-1の発現解析は終了している。現在、リン酸化シグナルを解析するためのFlagタグ融合DAP10高発現KHYG細胞の樹立を行っている。樹立後にfucoidan処理によるリン酸化を解析する予定である。III)NK活性化受容体リガンド、抑制性受容体リガンドおよび糖鎖壊変モデル細胞の作製は、順調に作製・樹立されている。今後、これらの細胞に対する細胞傷害活性を測定するとともに、多糖類による影響を解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、昨年度に樹立した糖鎖改変細胞やNK活性化受容体リガンドや、抑制性リガンドを発現した腫瘍モデル細胞を標的細胞として、細胞傷害や多糖類による制御機構を解析する。また、KHYG細胞の受容体低発現細胞を作成し、細胞傷害を担っているNK受容体の同定も試みる予定である。 これらの検討から、NK細胞上受容体発現パターンを比較しながら、LAK療法や免疫不活療法による標的細胞への傷害の程度を解析することで、どのような腫瘍細胞がLAKや免疫不活療法の適応になりうるかを考察する。また、活性化はNK細胞自身であるが、細胞傷害は標的細胞との相互作用が関与することで、活性化と細胞傷害の結果に相違があることも考慮されることから、GAGsや多糖類の腫瘍モデル細胞に対する細胞傷害に及ぼす影響を再度解析する。 これら一連の細胞レベルでの解析結果および以前に解析したタンパク質レベルでの結合データを考慮することで、分子レベルから細胞機能レベル、さらには免疫機能活性化制御メカニズムを明らかにすることが可能となる。また、現在NK細胞の活性化に用いられているIL-2との比較を行うことにより、多糖類を用いた免疫不活薬や調節薬としての可能性を見出すことができるものと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に作製した、NK活性化受容体リガンドや抑制性受容体リガンドを発現した腫瘍モデル細胞、糖鎖改変細胞、様々な培養がん細胞に対して、NK細胞による細胞傷害活性を測定する。また、KHYG細胞側の受容体発現をshRNA発現ベクターにてノックダウンすることで、細胞傷害を担っているNK受容体の同定も試みる予定である。そして、IL-2を陽性対照として、HeparinやFucoidanといったKLRs糖鎖リガンドのシグナル伝達増強作用をウェスタンブロットや免疫沈降を用いて解析する。なお、残金はシグナル伝達の解析を目的として、ウェスタンブロットに使用するバッファーおよびPAGEゲル他消耗品として計上したが、平成24年度に繰り越すことになった。現在、それらの方法を用いて、多糖類おける活性化シグナル伝達系の解析を行っており、残金はその目的のために使用する予定である これらの検討から、明らかとなったシアリル化糖鎖やHeparin, Fucoidanなどの糖類とKLRsとの結合と、本研究によるNK細胞活性化および標的細胞に対する細胞傷害という機能レベルまで、一連の繋がりを持って性質や機能を明らかにすることで、糖鎖の自然免疫系に関する知見が得られるものと期待される。
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Research Products
(8 results)