2011 Fiscal Year Research-status Report
高凝固性マイクロパーティクルによる癌における血栓塞栓症発症メカニズムの解明
Project/Area Number |
23790633
|
Research Institution | Kanagawa Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
伊藤 慎 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), その他部局等, その他 (00460139)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | マイクロパーティクル |
Research Abstract |
多くの癌患者が静脈血栓塞栓症を併発することが報告され、予後との関連も報告されている。しかし、その発症メカニズムの詳細は未だ不明であり、更に抗癌剤治療開始後に血栓塞栓症のリスクが高まることも多く、癌治療において併発する血栓塞栓症の予防の必要性が重要視されている。報告者らは、我々のグループが発見した異所性血液凝固第VII因子(fVII)を発現している癌細胞が、『自らで受容体である組織因子(TF)と異所性fVIIにより複合体を形成し、高血液凝固性マイクロパーティクルとして放出することで、血栓塞栓症の原因となっている』という新規の概念を検証し、癌治療での血栓塞栓症の高リスク群を判別し、選択的治療を施すことで予後改善を目指している。本研究では、平成23年度に細胞培養系による実験、平成24年度に実験動物を用いたin vivoの環境下での研究を行い、生体内での血液凝固活性をもつTF/fVIIa陽性MPsの動態を解明することで、概念の更なる確立を目指している。腫瘍組織から放出されるMPsが血流により生体内を循環していることは、Thomasらにより報告されていることから、概念の更なる確立は十分に期待できる。本研究を開始するにあたり、卵巣癌でのfVIIの発現量を調べる必要があった。各種がん細胞株におけるfVIIのタンパクレベルの発現を調べた所、他の癌細胞と比較して異所性fVIIの発現が高い事を明らかにした(2011年度癌学会で発表)。さらに、マイクロパーティクルの解析方法として、フローサイトメーターを用いてのマイクロパーティクル自身の検出方法を確立及びfVIIとその受容体である組織因子(TF)の存在を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究計画目標は、卵巣癌を中心とした培養細胞株に対する抗癌剤の影響の検討であった。本年度は、初めに癌細胞自身のマイクロパーティクルが血液凝固を持つことすなわち、本来放出タンパクであるfVIIが膜表面上のTFと結合し、細胞自身が血液凝固活性を示すことを明らかにするために、卵巣癌を中心とした各種癌細胞株間での血液凝固第VII因子の放出及び、血液凝固能について血液凝固第X因子の活性を見ることで検討を行った。各種細胞株でのfVIIの発現はあるにも関わらず放出は見られなかったが、癌細胞株自身の血液凝固活性が検出された。また、各種がん細胞株においてマイクロパーティクルの放出について調べたところ、卵巣癌細胞株において他の癌腫と比較して卵巣癌で明らかにマイクロパーティクルの放出量が多いことを明らかにし、マイクロパーティクルがfVII, TFを内在する事を明らかにした。 これらの結果を得るにあたり、フローサイトメーターを用いたマイクロパーティクルの検出方法及び、その蛍光標識をした抗fVII、抗TF抗体を用いた検出方法を確立した。当初の研究計画においては、更に、卵巣癌における抗癌剤添加による異所性fVIIの発現及びマイクロパーティクルの放出量の変化について検討まで行う予定であったが、そこまで至らなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究により他の癌腫の細胞株と比較して卵巣癌細胞が特にマイクロパーティクルを多く放出していることを明らかにした。これらの知見を元に各種卵巣癌細胞株での放出量の違いや抗癌剤曝露時での放出量の変化やその血液凝固能について検討する。最終的には実験動物に腫瘍細胞の移植を行い、抗癌剤添加時での血栓形成との関連を明らかにし、高凝固能なマイクロパーティクルを多量に放出する群が高リスク群であることを明確にする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に引続き、実験手法などに大きな変更はないことから、消耗品に関して生化学・分子生物学的手法に必要な細胞培養器具・プラスチック器具等の必需品の購入及び、実験動物や動物実験に関連する器具及び組織化学的な解析の為の試薬器具の購入に使用する。また、研究での成果の発表を、国内外の学会及び学術雑誌にて行う。この為の旅費、資料印刷費、論文投稿料などにも使用する。
|