2011 Fiscal Year Research-status Report
股関節における疼痛の発生・増強機序に関わる生理活性物質の解明と臨床への応用
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23790638
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中村 順一 千葉大学, 医学部附属病院, 医員 (80507335)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 疼痛の発生・増強機序 |
Research Abstract |
ヒト正常・股関節症での股関節組織の疼痛物質及び神経線維を明らかにするため、対照として大腿骨頚部骨折12 股、症例として変形性股関節症50 股の股関節滑膜組織を免疫染色法で評価した。一次抗体は、全ての神経線維のマーカーとしてTuJ-1 、疼痛性神経ペプチドのマーカーとしてCGRP 、炎症性サイトカイン産生の細胞内シグナルとしてNF-κB、炎症性サイトカインのマーカーとしてTNF-αとした。変形性股関節症の免疫染色陽性率はTuJ-1 46%、CGRP 54%、NF-kB 68%、TNF-α 58%であった。一方、対照ではこれら4つのマーカーは全て陰性であり、有意差を認めた。 TuJ-1陽性線維におけるCGRP二重陽性率は78%、NF-κB陽性細胞におけるTNF-α二重陽性率は76%であった。 疼痛性股関節(変形性股関節症)の臨床症状として、443股の手術前の股関節痛の部位とVisual Analogue Scale(VAS)、日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOAスコア)を評価した。疼痛部位は腰部・鼠径部・殿部・大転子部・大腿前面・膝周囲に分類し、手術により除痛が得られた部位を変形性股関節症による疼痛発現部位と定義し、股関節の疼痛発現部位を評価した。全例で術後にVASとJOAスコアの改善が得られた。股関節の疼痛発現部位は鼡径部89%、殿部38%、大腿前面33%、膝29%、大転子部27%、腰部17%、下腿8%に分布していた。股関節の痛みが大腿部や膝への放散痛として出現するのは、神経支配が多高位にわたるためと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究目的(2)ヒト正常例及び股関節症での股関節組織の疼痛物質及び神経線維の局在の検討について、成果を上げることができた。 股関節疼痛の発現部位に関してModern Rheumatologyに報告した(Nakamura J, Oinuma K, Ohtori S, Watanabe A, Shigemura T, Sasho T, Saito M,Suzuki M, Takahashi K, Kishida S. Distribution of hip pain in osteoarthritis patients secondary to developmental dysplasia of the hip. Mod Rheumatol. 2012 Apr 11. [Epub ahead of print])。 ヒト正常・股関節症での股関節組織の疼痛物質及び神経線維に関しては、データをまとめ英文雑誌に投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ラット正常・股関節症モデルでの股関節組織の疼痛物質及び神経線。SDラット30匹を使用し、正常モデル10匹、炎症モデル10匹、骨折モデル10匹の3種類の動物モデルを作成する。術後7日に左股関節を摘出する。TuJ-1、IB4、CGRP、TRP、Trk、TNFα、NFκB、IL-6、p55TNF受容体を免疫染色法により評価する。免疫染色法で発現を認めた物質について、酵素抗体法により定量的な評価を行う。(2) ラット股関節症モデルに対する生物学的製剤の除痛効果。SDラット30匹を使用し、正常モデル10匹、炎症モデル10匹、骨折モデル10匹を作成する。術後7日目に疼痛評価としてキャットウォークXT8.0(ノルダス社)による歩行解析を行う。生物学的製剤を股関節内に注入する。生物学的製剤の候補としては抗TNFα抗体としてInfliximab、Etanercept、Adalimumab、抗IL-6抗体としてTocilizumabである。生物学的製剤投与後7日に疼痛の再評価としてキャットウォークによる歩行解析を行った後に、左股関節を摘出し、免疫染色法と酵素抗体法により股関節組織の変化を評価する。(3) ラット股関節症モデルに対する体外衝撃波の除痛効果。SDラット30匹を使用し、正常モデル10匹、炎症モデル10匹、骨折モデル10匹を作成する。術後7日目に疼痛評価としてキャットウォークによる歩行解析を行う。左股関節に体外衝撃波を照射する。衝撃波の照射条件は0.08mJ/mm2、4Hz、3000発である。衝撃波照射後7日に疼痛の再評価としてキャットウォークによる歩行解析を行った後に、左股関節を摘出し、免疫染色法と酵素抗体法により股関節組織の変化を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は物品費(千円)として、以下を申請した。免疫染色用抗体(200): 抗体(TNFα、CGRPなど)の購入費用、酵素抗体法試薬(200): 酵素抗体法用のキット購入費用、実験動物(200): 実験に用いるSDラットと飼料代、旅費(千円)として、成果発表のために、国内旅費(100)及び外国旅費(300)を申請した。人件費・謝金(千円)として、外国語論文の校閲費(100)及び研究補助(300)を申請した。その他(千円)として、研究成果投稿料(200)を申請した。前年度の繰越金(760)は主に物品費に使用する計画である。
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