2012 Fiscal Year Annual Research Report
股関節における疼痛の発生・増強機序に関わる生理活性物質の解明と臨床への応用
Project/Area Number |
23790638
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
中村 順一 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (80507335)
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Keywords | 疼痛の発生・増強機序 |
Research Abstract |
疼痛性股関節の臨床症状を明らかにするために、443股の手術前の股関節痛の部位とVisual Analogue Scale(VAS)、日本整形外科学会股関節機能判定基準(JOAスコア)を評価した。手術により除痛が得られた部位を疼痛発現部位と定義した。全例で術後にVASとJOAスコアの改善が得られた。股関節の疼痛発現部位は鼡径部89%、殿部38%、大腿前面33%、膝29%、大転子部27%、腰部17%、下腿8%に分布した。95%は鼠径部及び殿部、大転子部からなる股関節部に生じる一方、55%に大腿前面及び膝、膝または腰部への放散痛を生じることが明らかになった。 ヒト股関節組織の疼痛物質及び神経線維を明らかにするため、症例50 股(変形性股関節症)、対照12 股(大腿骨頚部骨折)の股関節滑膜組織の免疫染色を施行した。全ての神経線維のマーカーTuJ-1 、疼痛性神経ペプチドマーカーCGRP 、炎症性サイトカイン産生の細胞内シグナルNF-κB、炎症性サイトカインのマーカーTNF-αを評価した。症例の免疫染色陽性率はTuJ-1 46%、CGRP 54%、NF-kB 68%、TNF-α 58%であった。一方、対照では全て陰性であった。TuJ-1陽性線維におけるCGRP二重陽性率は78%、NF-κB陽性細胞におけるTNF-α二重陽性率は76%であった。変形性股関節症の疼痛発症機序にはこれらの因子の関与が示唆された。 ラット股関節における疼痛物質及び神経繊維を明らかにするために、神経伸長因子(NGF)を関節内投与し、Th13からL6高位の後根神経節の免疫染色と股関節滑膜の組織学的検討を行った。NGF投与により滑膜炎が惹起され、炎症性疼痛ペプチドの支配感覚神経での発現を認めたことから、NGFが疼痛発現に深く関与することが示唆された。
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