2011 Fiscal Year Research-status Report
形態情報に基づく関心領域決定法を用いた痛みの脳領域間相互作用の解明
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23790655
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
眞野 博彰 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (10571581)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | MRI / Parcellation / Segmentation / 拡散強調画像 |
Research Abstract |
初年度平成23年度は、研究計画に記した関心領域決定法開発に着手し、解剖学的情報に基づく空間的側面からの検討に費やした。 初めに、既存の組織分画プログラムの選定を行う為、種々のプログラムを試用し、その特徴について検討しが、この過程で、新たな検討課題が浮上した。Pain Matrixと呼ばれる脳内痛み関連領域が本研究の関心領域であるが、それらの領域は皮質および皮質下領域に複雑に存在している。これに対して、脳の皮質領域の分画化において、形態画像情報と現在提案されているwatershed, edge-basedなどのアルゴリズムだけでは、十分に細かな切り分けが出来ない事が、検討過程で次第に明らかとなった。そのため、実用までに隔たりがあるとして、計画段階では検討対象外であった、拡散画像に基づく分画法の併用についても、新たに導入を試みた。 多軸の拡散画像撮像に伴う時間の延長や、分画化の為のターゲット領域の設定の点で、現時点でも課題はあり、実用までに幾分隔たりがあるものの、従来の組織分画技術のみの適用に比べ、補完される情報は非常に多く有用であると考えられる。HARDI、DSI、Q-ball Imagingなど、近年、撮像法・解析法に新たな試みがされており、より精度の高い解剖学的情報に基づく手法を得られる可能性が見込まれる。現在、これらの技術も取り込んだ手法を検討中であり、成果報告するまでに至っていないが、次年度以降も、引き続き検討していく。 本研究で開発する関心領域決定法は、痛み研究以外にも、味覚や嗅覚、薬物投与時の脳活動解析など、刺激に対する脳内血行動態モデルの仮定の困難な、あらゆるfMRI研究に適用できる可能性があり、その波及効果は極めて大きいと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
関心領域決定法の開発の過程で、検討課題が浮上したため、研究計画に記した手法に比べ、より高精度な手法についての検討も行ったため、当初の研究計画に比べ、やや遅れていると評価する。 実験環境の整備についても、2台のMRI装置が隣接する特殊な施設環境に対して、隣接機にこちらの実験の影響が出ないよう実験用持込機器の設置について配慮する必要が明らかとなったため、対策を講じた。研究計画では見積られていなかったこの点の発生も、現在の遅延の要因の1つと考える。 またこれらには、東日本大震災の影響により、科研費補助金の給付額が未定であった為、研究に時間を割く事の可能であった23年度上半期の非繁忙期に、必要な物品購入・研究調査等が円滑に進められなかった点も影響した。
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Strategy for Future Research Activity |
関心領域決定法について、引き続き拡散画像を併用した拡張的な手法を模索し、より精度の高い手法を求める。現在、研究がやや遅延している原因の1つでもあるが、これは意義深い有益な試みであると考えるので、深刻な研究実施の遅れとならない範囲で、今後も積極的に挑戦していく。 具体的には、初めに、b-valueとして規定されるMotion Probing Gradient (MPG)強度とMPGの多軸化による角度分解能の改善と、それらによる撮像時間の延長について、データの有用性と実験実施可能性の観点から最適化を進めていく。 次に、それらの撮像方法の改善と実用性を受けて、拡散強調画像から算出するトラクトグラフィについても、同一ボクセル内を交差する白質線維の検出能と、計算コストの観点から最適化する。 最終的に、T1強調解剖画像と拡散強調画像とを相補的に統合して、適切なサイズに切り分けられた解剖学的組織分画を求られるようにしていく。 またこれに並行して、可能な限りの予備実験・本実験を適宜進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に購入出来なかった実験実施に向けての機器の購入と、実施についての施設使用料、並びに被験者謝金、必要に応じて解析補助の謝金支払いに充てる。また、必要な研究調査・打ち合わせの旅費、研究資料購入、研究成果報告に関わる経費がが主たる使用項目となる。
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