2012 Fiscal Year Research-status Report
形態情報に基づく関心領域決定法を用いた痛みの脳領域間相互作用の解明
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23790655
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
眞野 博彰 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 研究員 (10571581)
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Keywords | MRI / Thermosensory / Pain / Perceptual Learning |
Research Abstract |
本研究の主目的である痛みの中枢性メカニズム解明ため、現在争点となっている課題について調査し、問題を切り分ける実験課題および計測法の設定を行い、実験を実施した。 Craigらの論文を機に、特に視床レベルの痛み伝達経路の核となるか否か、VMpoの関わりの是非についての激しい議論が展開されているなか、その大きな論点の1つでありながら、これまで十分な検討がなされていない、痛みの経路と温冷感覚の経路の関係性に着眼し、温冷知覚の脳活動を検討する事とした。実験的介入とその前後の脳をマルチモーダルに比較する枠組みを構築する事により、知覚学習・脳の可塑性の視点から痛みの中枢性メカニズムについて検討する独創的なものとした。 30名ほどの参加協力者に対し、行動実験およびMRI実験を行い、発表に十分な数のデータ収集を終えた。この行動実験結果、温冷感覚における知覚学習の存在を示唆する報告が、平成25年度、Neuro2013(第36回日本神経科学大会)での発表に採択された。これらは画像解析結果と併せ、知覚学習のみならず、痛みの中枢性メカニズム、脳可塑性についての知見として報告される。 また、平成23年度に引き続き行った関心領域決定法の検討では、これまでDSI・Q-ball Imagingなど高度な拡散強調画像を利用した手法にも目を向けてきたが、近年、安静時脳活動の機能的結合解析(Resting-state Functional Connectivity: RSFC)を基にした特徴量抽出と機械学習アルゴリズムを用いた、精神疾患の判定法開発の試みがなされているなか、この分野を中心とする応用可能性に着目し、本手法の利点を活用する方法について検討を行った。基本的アイデアの骨子はまとまりつつあるが、評価法が隘路となっており、この検討が平成24年度を終えた時点での課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成24年度11月に勤務地の変更があり、開始からの1年半の間に構築した環境の再構築や、利用可能な資材と時間の変更等が生じた。厚意により、科学研究費の執行上の変更は平成25年度からと最小限の変更になったものの、研究実施のスピードに遅れが生じた面が少なからずあった。 これまでは年度後半の繁忙期に研究を進める事は出来なかったが、勤務所属変更に伴い、平成24年度は1年を通じて、ほぼ一定のペースで研究実施可能になった事から、年度後半に幾分か研究計画の遅れを巻き返す事が出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
23年度および24年度に情報収集・検討した解剖学的組織分画法/信号導出法について、その長短を体系的に検討し、実験により得たデータに対しての適応可能性を検討する。 24年度に得た温冷知覚実験データの解析を進めていく。マルチモーダルにデータを得たため、それぞれのモダリティの特性を活かした観点から分析を進める。また当初、解剖学的組織分画・関心領域決定の為のT1強調解剖画像・拡散強調画像情報であったが、実験的介入とその前後の脳活動計測という実験の枠組みを用いた事により、短い時間間隔ではあるものの、縦断的な分析も可能となった。同様の比較を、安静時脳活動・課題実施中の脳活動における比較、また行動実験における成績の比較および、それらと脳活動との相関についての解析を行い、神経学的基盤を考察していく。 また、これらの解析の中で、取得したデータに適応可能な種々の関心領域決定/信号導出法を用い、合理的な結果を得るための手法の検討を行うと同時に、手法自体の有用性も評価し、有効な適応例を提案していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度に購入出来なかったデータストレージ等の解析関連機器の購入と、必要に応じて、追加実験実施についての施設使用料、並びに被験者謝金、解析補助の謝金支払いに充てる。また、必要な研究調査・研究資料購入、研究成果報告に関わる物品・旅費が主たる使用項目となる。
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