2012 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質評価のためのヒト型P450を持つメダカの作製
Project/Area Number |
23790673
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉岡 範幸 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (70365229)
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Keywords | CYP1A |
Research Abstract |
CYP1AはP450に属する代表的な酵素で、多環芳香族炭化水素などの化学物質の解毒酵素として知られている。AhRというダイオキシン受容体に異物が結合すると、AhRは核内に移行し、CYP1Aなどの一連の解毒代謝酵素を転写活性化する。異物はCYP1Aにより酸素付加などの化学修飾が行われた後、グルクロンサン抱合酵素などの第二相の酵素によりさらに修飾を受け、生体外へ排出される。 我々の研究室では、TILLING法というランダムミュータジェネシスを応用した方法により、CYP1A遺伝子を欠損したメダカを作製することに成功した。このメダカは、RT-PCRによる転写物の測定、ウェスタンブロットによるタンパク質の定量、エトキシレゾルフィンによる酵素活性測定により、完全にCYP1Aの機能を喪失していることが証明された。 メダカは小型の脊椎動物で、多数の化学物質の毒性評価に非常に適している。多くの化学物質は、大気汚染の場合は降雨により、また、土壌汚染の場合は地下水や河川への流入により、水圏に移行することがある。水生動物は食物連鎖により化学物質を生体濃縮し、最終的にそれらが人により摂取されるので、魚類における解毒代謝系の解明は非常に重要である。 CYP1A遺伝子を欠損したメダカは、野生型のメダカに比べて数十倍低い濃度の多環芳香族炭化水素により死亡し、化学物質に対する毒性が増大していうことが明らかになった。この個体に対する毒性評価のために、CYP1Aプロモーター下に蛍光タンパク質EGFPを結合したコンストラクトを作製し、野生型の個体に顕微注入して、トランスジェニック個体を作製することに成功した。この個体は、化学物質曝露量に比例して蛍光強度が変化し、ヒトのCYP1A多型による化学物質感受性の多様性を評価するために非常に有用な系統であると結論付けられた。
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Research Products
(4 results)