2012 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアDNAの遺伝情報に基づいた加齢性白内障の素因と早期予測
Project/Area Number |
23790678
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
長井 紀章 近畿大学, 薬学部, 助教 (90411579)
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Keywords | ミトコンドリアDNA / ヒト水晶体上皮細胞 / シトクロムcオキシダーゼ / ATP / Ca(2+)-ATPase / 白内障 / 一酸化窒素 / 酸化的ストレス |
Research Abstract |
白内障発症とミトコンドリアDNA遺伝の関連性を明確とし、白内障発症の早期対策に向けた簡易的な予測法の開発を目指すべく、平成24年度は水晶体上皮でのミトコンドリア傷害が、ATP産生能及び酸化的ストレスによる機能不全に主として関与する事、さらにこのミトコンドリア傷害は、急速かつ強いレベルの酸化的刺激が起こった際にみられることを明らかとした。1.遺伝性白内障モデルの水晶体上皮におけるミトコンドリア傷害と白内障発症: 遺伝性白内障モデル動物を用い、水晶体上皮におけるミトコンドリア傷害が ATP産生能低下に関わり、結果として水晶体中のイオンバランス崩壊に繋がることを明らかとした。さらに、この上皮におけるミトコンドリア傷害には、急速かつ強い酸化的刺激が関わる事を明らかとした。2.ヒト水晶体上皮細胞でのミトコンドリア傷害とその予防: ヒト水晶体細胞での一酸化窒素(NO)過剰産生は、水晶体中のミトコンドリアDNA傷害とそれに伴うATP産生能低下を引き起こすが、早期にNOの産生を取り除くことで、これらミトコンドリアDNAの傷害は修復されることを明らかとした。また、急速なNOによるミトコンドリア傷害時間が短いほどATP産生能の回復が早いことがわかった。一方、一定以上の刺激がかかった際には、その機能の正常化に時間がかかり、水晶体白濁が進むことを見出した。以上、酸化的ストレスが急速かつ強いレベルで起こった際にはミトコンドリア傷害に伴うATP産生能低下が起こり、これらATP産生能低下の回復には約18時間という時間がかかる事を明らかとした。また、これら ATP産生能低下が短時間でも起こった際には、水晶体でのイオンバランスが崩れ、徐々に水晶体が白濁化することから、加齢性白内障予防として、紫外線などによる刺激後すぐに、抗酸化薬により水晶体での酸化的ストレスを抑制することが重要であるという知見が得られた。
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Research Products
(3 results)