2011 Fiscal Year Research-status Report
ラオス農村部住民の、水に関連した感染症の予防行動を決定づける認知的・社会的要因
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23790690
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川口 レオ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70508895)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 健康リスク行動 / 水系感染症 / 健康信念モデル / ラオス |
Research Abstract |
開発途上国における感染症対策には、住民の行動変容が鍵となるものが少なくないが、さまざまな理由によって、行動変容の動機が十分に高まらないことが、対策の成功に対する障壁になっている。本研究は、ラオスにおける、水関連感染症の予防に関連する住民の健康行動に着目し、住民が「なぜ健康行動を起こさないのか」について、健康行動理論モデルを用いて分析し、その要因を明らかにするものである。今年度の主な活動は、研究対象地および研究対象とする健康行動の選定と、対象地での基礎データの収集(次年度の予備調査)およびその分析であった。1)調査対象地の選定:研究対象地をラオス南西部のカムアン県、サワナケート県の2県とした。また、感染症流行情報をもとに、研究対象となる疾患とそれに関連する健康行動(危険行動)を決定した。すなわち、レプトスピラ症・住血吸虫症(汚染水との接触)、腸チフス・コレラ(汚染水の摂取)、肝吸虫症(川魚の生食)である。以上は、現地協力者がラオス国内での感染症流行情報を収集し、研究代表者との電話会議やメールによる協議によって決定した。調査対象農村の選定については、代表者の渡航時に最終決定することにした。2)現地予備調査:本予備調査は、次年度の調査で使用する質問票の作成のために重要な情報を提供するものである。代表者が現地協力者とともに研究対象地を訪問し、のべ約40名の住民を対象とした面接および観察調査を予定していた。住民が研究対象疾患をどのように認識しているか、また、住民がその疾患への罹患と日常生活上の特定の行動とをどのように関連づけているかなどについて明らかにするものである。当初、10~11月ごろの調査を予定していたが、研究代表者の海外渡航ができなくなり、次年度に延期となった。その結果、当初予定していた質問票も今年度中に作成できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度予定していた活動は、次年度に実施する本調査に向けた「予備調査」的なものであったが、とくに現地での基礎データの収集については、後述の理由により、計画の立案と研究代表者の渡航ができず、次年度にずれこむことになった。研究対象地や研究対象疾患、およびそれに関連する健康行動の選定については、ほぼ計画通り行うことができた。現地協力者がラオス国立疫学研究所の職員であり、国内の感染症流行状況に関する情報を入手でき、それによって、研究対象県の選定と、研究対象感染症の絞込みを行うことができた。なお、この作業はSkypeによる電話会議や電子メールによる討議によって進められた。現地での予備調査については、当初10~11月の渡航を予定していたが、研究代表者の健康上の理由によって海外渡航ができなくなった。23年7月より治療を開始したが、病状の進行によって療養を余儀なくされ、現地調査の立案が満足にできなかったうえ、主治医から海外渡航の延期を勧告されたこともあり、準備段階で中断している。なお、交付申請において実施計画の一部として記載した「医療行動心理学および健康の社会的決定要因に関する研修コースの受講」については、7月初旬に実施した(自費で参加)。
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Strategy for Future Research Activity |
予定していた現地調査を今年度中に遂行できなかったため、次年度に予備調査と本調査の両方を実施する予定である。なお、研究活動遅延の原因となっていた健康上の問題に関しては現在ほぼ解決しており、支障なく研究活動を行うことができる状況にある。本調査の必要調査対象人数の算出および質問票の作成のために、予備調査として基礎データを収集することは必須である。調査対象県のうち、おおよそ4箇所の農村を訪問し、各村で数名~10数名の住民を対象とした個別・グループ面接を実施し、住民のもつ疾病概念に関する調査を行う。毎年5月~10月は雨季にあたり、とくに8月~9月上旬は洪水等によって対象地への交通が確保できない可能性もあるため、調査の実施は9月下旬~10月を予定している。予備調査で得られた情報を元に、本調査で使用する半構造化質問票を作成する。また、研究協力者に依頼し、作成した質問票のプレテストを行い、適宜修正する。この作業を平成24年11月中に完了する。その後、調査対象とする農村を8か所選定し、作成した質問票を用いて住民の健康行動に関する調査(本調査)を実施する。実施期間は平成24年12月~25年1月を予定している。質問票による調査とともに、各調査対象者は、合計800名程度になる予定である。その後、収集したデータの分析を行う。健康信念モデルに基づく認知的要因や教育・社会的要因などを独立変数、性別・年齢などの個人特性を統制変数、調査対象である各種健康行動の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い、行動変容に強く関連する心理的・社会的要因を明らかにする。分析完了は平成25年3月ごろを予定している。研究協力者との意思疎通を密にし、作業の効率化および情報の共有を図る。また、研究成果の公表については、データの分析後、可及的速やかに関連学会ならびに学術論文として発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上述のとおり、研究代表者の健康上の理由により、23年度に予定していた現地での予備調査を実施できなかった。元来、予備調査の遂行のために初年度の研究費の大半を充てていたため、ほぼ全額を24年度に繰り越すことになった。平成24年度中に2年分の研究を遂行しなければならないが、とくに、24年度の本調査を予定通り実施するためには、23年度の予備調査を速やかに遂行する必要がある。そのためには、当初の予定よりも調査員の数を多くしたりする必要があるが、調査期間自体を短縮して行うことで予算内で実施できる。また、当初、予算を割り当てていた「医療行動心理学および健康の社会的決定要因に関する研修コースの受講」については、諸事情により自己負担にて参加した。この余剰分についても、予備調査における車輌の借り上げなどに充当することで、本来予定していた調査を実施できる見込みである。また、24年度の本調査については、開始時期が当初の予定より約2ヶ月遅れ、平成24年12月になる見込みである。調査対象者が必要数に達するまでに1ヵ月半程度の現地調査を行う必要があるが、研究協力者との意思疎通を密にし、作業の効率化を図る。
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