2012 Fiscal Year Research-status Report
ハンセン病患者を親に持つネパールの思春期青年のスティグマ付与の過程
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23790701
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Research Institution | Saitama Prefectural University |
Principal Investigator |
西田 乃生子(山口乃生子) 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 講師 (70381431)
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Keywords | ネパール連邦民主共和国 / ハンセン病 / スティグマ |
Research Abstract |
本研究ではハンセン病患者を親に持つ思春期青年のスティグマの性質と付与過程に関する研究を行う。研究期間内には以下のことを明らかにすることを目的としている。1. 患者を親に持つ10代後半(17-19歳)の思春期青年の主観的な体験やコーピングを通して、スティグマの様態や性質を明らかにし、どのような過程によって患者の子どもにスティグマが付与されるかを解明する。2. 患者を親に持つ子どものコーピング強化のための心理社会的支援や医療サービスの在り方を発達課題に即して検討する。平成24年度では、主に1.の目的を達成するために、以下のことを実施した。 (1)本研究の参加者選定:研究参加者はネパールのハンセン病療養所もしくは寄宿舎に住む、患者を親に持つ17-19歳の思春期青年15~20名とし、本人がハンセン病の診断を受けていないこと、学校に通学していることを取り込み基準とした。これらの参加者を選定するため、ネパール連邦民主共和国(以下、ネパール)での研究のカウンターパートであるネパール救らい協会にリスト作成を依頼し、入手した。 (2)半構造化面接に使用する質問内容の作成:本研究は、半構造化面接を用いてデータを収集するため、質問内容およびインタビューガイドを作成した。質問内容は、【親の病気を知った時・自覚した時】と【現在】とし、各時期における 行動や経験、意見や価値観、気持ち(feeling)、属性や心理社会的背景とした。これらの質問項目およびインタビューガイドは英文およびネパール語に変換し、専門家のスーパーバイズを受けた。 (3)調査実施のための準備:本研究の調査実施のため、研究者が所属する埼玉県立大学の倫理委員会へ申請し、承認を受けた。また、調査はネパールで実施するため、ネパール保健省の下部組織であるNepal Health Research Councilへの申請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究期間は2年間を予定しており、現在は対象者の選定、調査項目の作成、国内外における倫理審査委員会への申請など、当初の予定通りに研究を進めている状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の計画については以下を予定している。 (4月~5月)現地における調査準備:研究者が直接ネパール訪問を行い、調査実施のための準備を行う。カウンターパートであるネのパール救らい協会との打ち合わせ会議、調査協力者との打ち合わせ会議、Nepal Health Research Councilへの手数料支払いおよびその他の手続き等を行い、調査実施に向けての最終準備を行う予定である。 (5月~8月)調査協力者とともにデータ収集を行う。 (9~12月)得られたデータは質的帰納的分析法を用いて分析を行う。1.面接を録音したテープから逐語録を作成し、分析データとする。2. 事例をいくつか比較して、それらの類似点と相違点を検討することによって、事例の分類を行う。分類によって生成されたグループはカテゴリーとする。3. 同じカテゴリーに属する事例同士について比較を進め、それらの類似点と相違点について検討する。4. カテゴリーに共通する特性を見出し、カテゴリー間の関係と要因をまとめ、ハンセン病のスティグマの性質と付与過程を明らかにする。 (12月~3月)得られた結果を総括する。どのような過程でハンセン患者を親に持つ青年のスティグマが付与されやすいかを明らかにし、ネパール国内や日本、欧米諸国の既存の文献との比較を行う。それらの結果から、心理的苦痛へのコーピング行動を促進できるよう身体的、精神的、社会的特徴を踏まえた関わりや支援方策を具体的に提言する。最終的に報告書に記載し、結果を公表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. 「次年度使用額(B-A)」が「0」より大きく、当該研究費が生じた理由としては、平成24年度にネパールへの渡航を計画し、外国旅費の申請をしていたが、Nepal Health Research Councilの申請手続きに時間を要した。次年度での渡航に計画を修正したため、繰越金が発生する事態となった。 2. 平成25年度は研究準備の最終段階、データ収集および分析を主として研究を進めるため、主な研究費の使用計画としては下記とする。本研究はネパールにおける研究実施のため、外国旅費(2往復分)が発生するが、ネパール国内の調査協力者の支援により、研究代表者1名分の予算を計上する。また、本研究では半構造化面接を行うため、面接内容をネパール語から英語への翻訳が必要となるため、翻訳料が発生する。
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