2011 Fiscal Year Research-status Report
芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクに関する歴史的コホート研究
Project/Area Number |
23790704
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
冨岡 公子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20393259)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 歴史的コホート研究 / 芳香族アミン / 発がんリスク / 罹患リスク / 職業性曝露 / 化学物質 / 労働衛生 / 疫学 |
Research Abstract |
本研究は、1つの芳香族アミン製造事業所に在籍し、職業上芳香族アミンに曝露されていた元労働者を含めた全員(死亡者、退職者を含む)を対象とした発癌リスクに関する歴史的コホート研究である。本研究ではフィールド先の事業所の労働者と使用者の両者から、本調査への全面的な協力が得られており、事業所から提供される労働者名簿によって対象者を同定し追跡する。具体的には、1970年-1977年に在籍していた従業員456名の名簿の提供を受けた。そのうちA事業所に半年以上の就労し、芳香族アミンの取扱いに従事したことのある労働者(死亡者、退職者を含む)257名を対象とした。追跡調査:平成23年11月にアンケート調査を実施した。アンケート未返信者への催促状を平成24年1月に行った。平成24年3月末時点で回収されたアンケートは136件、回収率は52.9%である。アンケート未返信者のうち、退職時点での住所に郵便物が届かず返還されて来た29名については、最終判明地に赴き現地調査や同僚からの聞き取り調査を行い情報収集を試みている。また、郵便物が届いておりアンケートを返信していない者については、アンケート簡易版を作成して、平成24年6月に最後の協力依頼を行う予定である。死亡診断書の閲覧:平成24年3月29日付けで法務省の認容を得ることが出来た。平成24年度の調査では、死亡が確認された対象者の死亡診断書事項証明書を順次入手していく。医療機関からの情報提供:平成24年3月末時点で、アンケート調査にてがんのり患ありと回答された事例は30例である。この中で主治医への問い合わせに関する同意が得られた者について、医療機関を進めている。がんり患情報:大阪府がん登録資料の利用について申請を行い、平成24年2月28日付けで承認を得ることが出来た(承認番号11-0017)。今後、1970-2006年の癌り患情報を照会していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では初年度の6月にアンケート調査を実施する予定であったが、フィールド先であるA事業所から、震災の影響で会社としては工場における震災対応を優先しなければならず、アンケート調査を延期して欲しいとの申し出があり、11月に実施する運びとなった。アンケート調査が5ヶ月遅れたものの、法務局や地域がん登録への申請などは、予定通り準備を進め、認容や承認を得ることが出来ている。アンケートの回収率も初年度末時点で5割を超えており、初年度の調査計画は、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
震災の影響でアンケート調査の実施が遅れたものの、法務局の認容や地域がん登録資料の利用承認は予定通りに得ることが出来たので、今後、事業所の労働者と使用者の協力を得ながら、未回収のアンケートを1つでも多く回収し、本研究への同意者を一人でも多くして、可能な限り追跡率を上げることが今後の最大の課題・目標である。そして病院からの医療情報、死亡診断書および地域がん登録資料の情報提供を受けて、芳香族アミン曝露作業者の死亡リスクと罹患リスクを評価し、芳香族アミンはヒトの尿路系以外にも癌を引き起こすのかを明らかにして、芳香族アミン曝露作業者の今後の健康管理のあり方に役立つ資料を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の計画よりアンケート調査の実施が5ヶ月遅れたため、アンケート調査の催促、消息不明者の追跡調査、医療機関調査については、初年度未実施分と次年度予定の調査を同時進行させていく。 法務局の認容と地域がん登録資料の利用承認は初年度に予定通りに得ることが出来たので、次年度は当初の計画通り、死亡診断書の閲覧や癌り患情報の収集を進めていく予定である。 次年度は、本研究の事業期間の最終年度にあたるため、可能な限り追跡率を上げて、芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクを評価して研究成果をまとめ、学会発表や論文公表を行う。
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