2012 Fiscal Year Research-status Report
芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクに関する歴史的コホート研究
Project/Area Number |
23790704
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
冨岡 公子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20393259)
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Keywords | 歴史的コホート研究 / 芳香族アミン / 発癌リスク / 職業性曝露 / 化学物質 / 労働衛生 / 疫学 |
Research Abstract |
本研究は、1つの芳香族アミン製造事業所に在籍し、職業上芳香族アミンに曝露されていた元労働者を含めた全員(死亡者、退職者を含む)を対象とした発癌リスクに関する歴史的コホート研究である。本研究ではフィールド先の事業所の労働者と使用者の両者から、本調査への全面的な協力が得られており、事業所から提供される労働者名簿によって対象者を同定し追跡する。対象者の同定は、会社から提供された従業員情報を基に、芳香族アミンの取扱いに従事したことのある労働者を精査した結果、224名の男性労働者を同定した。 調査実施状況については、平成23年度に実施したアンケート調査による回収率は52.9%であったので、平成24年度はアンケート未返信者に対する催促や追跡を行った。具体的には、郵便物が届いておりアンケートを返信していない者については、アンケート簡易版を作成して、平成24年6月に2回目のアンケート調査を行った。退職時点での住所に郵便物が届かず返還されて来た者については、住民票による照会、最終判明地に赴き現地調査、同僚からの聞き取り調査を行った。その結果、平成24年末時点の追跡率は77.1%となった。法務省の認容を第1回目は平成24年3月29日付けで得ることが出来たが、平成24年度の調査で、さらに死亡が確認された対象者の死亡診断書事項証明書を入手するために、法務省の認容について再申請し、平成25年1月23日付けで得ることが出来た。平成24年末時点で、アンケート調査にて癌り患ありと回答された事例は60例であった。この中で主治医への問い合わせに関する同意が得られた者について、医療機関調査を行った。さらに、大阪府がん登録資料の利用について申請を行い、平成24年2月28日付けで承認(承認番号11-0017)を得ることが出来たので、平成24年度は、1970-2006年の癌り患情報の照会を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究費申請時は2年間の研究計画であったが、震災の影響で会社は震災対応を優先しなければならず、その間、調査協力不可との申し出があり、研究期間を1年延長することになった。平成24年度末の追跡率は77.1%となり、疫学研究として最低限必要な追跡率7割はクリアすることが出来た。法務局への再申請や地域がん登録の照会は、予定通り、平成24年度に行うことが出来た。研究計画を3年間に延長したことにより、平成24年度の調査計画は、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
コホートサイズが小さいため、追跡率は出来る限り100%に近づけて、精度が高く、統計学検定に耐えられるレベルに引き上げる必要がある。 今後、事業所の労働者と使用者の協力を得ながら、未回収のアンケートを1つでも多く回収し、本研究への同意者を一人でも多くして、可能な限り追跡率を100%に近づけることが、今後の最大の課題・目標である。そして病院からの医療情報、死亡診断書および地域がん登録資料の情報を基に、芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクを評価し、芳香族アミンはヒトの尿路系以外にも癌を引き起こすのかを明らかにして、芳香族アミン曝露作業者の今後の健康管理のあり方に役立つ資料を得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
事業所の労働者と使用者の協力を得ながら、消息不明者の追跡調査、調査協力への未同意者へのインフォームドコンセントを行う。 死亡者に対しては法務局への再申請を行い、死亡診断書事項証明書の入手を進めていく。 次年度は、本研究の事業期間の最終年度にあたるため、可能な限り追跡率を上げて、芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクを評価して研究成果をまとめ、学会発表や論文公表を行う。 論文については、英文論文としてまとめ、海外の学術雑誌への投稿を目標とする。
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