2013 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族アミン曝露作業者の発癌リスクに関する歴史的コホート研究
Project/Area Number |
23790704
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
冨岡 公子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (20393259)
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Keywords | 疫学 / 歴史的コホート研究 / 職業性曝露 / 発がんリスク / SIR / ベンジジン / β‐ナフチルアミン / 産業保健 |
Research Abstract |
【目的】ベンジジン、β‐ナフチルアミンなどの発癌性芳香族アミン類(芳香族アミン)による尿路系以外の部位の発癌リスクを検討する目的で歴史的コホート研究を実施した。 【方法】対象者は大阪府内のA事業所で芳香族アミンを取扱っていた男性労働者224名である。地域がん登録資料、死亡診断書または診療情報によって癌罹患が確認できたケースを癌罹患ありと判定した。大阪府男性の1965年から2010年までの国勢調査年における5歳年齢階級別癌罹患率と対応する合計人年とから期待値を算出し、観察値を期待値で割ってSIRを求め、ポアソン分布に従いその95%CIを求めた。肺癌罹患をエンドポイントとしたCoxの比例ハザードモデルを用いて、喫煙、ビスクロロメチルエーテル曝露、および初曝露年齢を共変量として、肺癌リスクのHRと95%CIを算出した。 【結果】追跡者数は216名(追跡率96%)。全癌(観察値81)のSIRは1.7 (95%CI:1.4-2.2)で有意な過剰発癌を認めた。部位別解析で有意なSIR上昇を認めたのは、肺癌(観察値18、SIR=2.4、95%CI=1.4-3.8)および膀胱癌(観察値7、5.5、2.2-11.3)であった。潜伏期間を20年と仮定した場合、肺癌のSIRは、在職年数長期群で有意に上昇した(3.1、1.7-5.1)。肺癌罹患に対する調整HRは、長期群で3.0(95%CI=0.8-10.9)でmarginally significantを認めた(p=0.091)。 【考察】芳香族アミン取扱い労働者における尿路系以外の発癌リスクの先行研究は、発癌リスクと曝露との関連がない、喫煙情報の欠如などの限界があった。本研究は、喫煙の影響を考慮してもなお、芳香族アミン製造時期の在職年数と肺癌リスクに関係を認め、職業性芳香族アミン曝露による尿路系以外の発癌リスクを証明した初めての報告である。
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